見出し画像

"紅と私の輝き時"

陽の沈み時が早くなり
季節はまた一つ死んだ
紅葉が輝く時期もそう長くは無い
私が一番、安寧を保ち続け
光り輝ける唯一の季節でもある
しかし、今年はどうも、そう簡単に上手くはいかないのだ

私はある日、道端で意識を無くしその場で倒れた
強く頭を打ち、着けていたメガネも割れた
持病が再発した、悪化したのだ
脚力が衰え、鼓動が段々弱くなり
目も鼻も耳も悪くなり
咳が出るようになった
突発的な震えや強張り、眩暈も頻繁に出ることも増えた

学校が終わりバイトを勤務したあと家に着くと、家で過ごした時の記憶が一切無くなる
意識を取り戻すと、既に陽は登り始め
カラスと小鳥が目覚め、鳴き声を放つ
隣の部屋から物音が聞こえ、外からはゴミ収集車のエンジン音と生臭いゴミの匂いが時折私の鼻につく
私は支度を僅かの時間で終え、またいつものように学校へ向かう
夕方まで講義を受け終え帰宅途中、ふと地面を見下ろし道端に落ちていた一枚の葉を手に取る
鮮やかな紅色が美しく輝いていた
上を見上げるとそこは綺麗な紅葉となっていたのだ

私の輝き時が始まったのだ。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?