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飢えるということ

いま私は精神科のデイケアに居ますが、遠い入院時代を仲間と思い出すとき、避けて話すことが出来ないのが、閉鎖病棟で「飢えた」経験です。

院内の3度の食事はカロリーが厳格に決められております。

週に一度の副食購入のときにスナックやチョコレート、カップラーメンなども買えるのですが、欲しいものを欲しいだけという訳にはいきません。

これが糖尿病の基礎疾患のある患者だと状況はさらに悪くなるのですが、閉鎖病棟への入院というのは「とにかく腹が減る」ものなのです。

病院サイドとしても副食の購入に制限をかけないと、患者さんが3度の食事にほとんど手を付けないで不健康なものばかり食べたがるという、本末転倒なことになったりする。

しかし、院内にはかつて薬物依存だった元ヤクザ、元テキヤ等の海千山千がわんさといるわけですから、当然のように賭け麻雀やスポーツ賭博(プロ野球、高校野球、大相撲、プロボクシングのタイトルマッチなど)が始まります。

まさにチョコレートやカップラーメンそのものがお札がわりに飛び交うという(笑)ことになるわけです。

もちろん院内の賭博行為は禁止されていますのでおおっぴらには出来ない建前ですが、閉鎖病棟には娯楽なんてほとんどありませんから、話のわかる看護師は見て見ぬふりをしてくれるのです。

私は賭け事が嫌いですし、週末は自宅に帰ることが赦されていたため、「沼にハマる」ということはありませんでしたが、ささやかな愉しみしかない拘禁生活をいかにエンジョイするかで入院患者のみなさんはそれぞれアタマを使う。

もちろん勝負に負け続けると「地獄の飢え」が待っていたものです(笑)。

そんな昔話をする仲間もひとり、またひとりと鬼籍に入って行きました。

きっとあの世であいつら、入院時代の苦労話をしながら、ろくでもないことをやっておるのではないでしょうか(笑)。

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