#65 「パブリックドメイン」〜知っておくとカッコイイ法律用語〜
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商標とか著作権って、一般には馴染みのない言葉が結構あるんですよね。
そこで、「これを知っておくとカッコイイ」という法律用語について、
シリーズでお届けしたいと思います。
★「パブリックドメイン」
今回の「知っておくとカッコイイ著作権用語」は、
「パブリックドメイン」
です。
聞いたことあるよという方もいらっしゃるかもしれません。
「パブリックドメイン」は、
「著作権が、元々発生していないか、権利が消滅した状態」
のことを言います。
つまり、その対象のものについては、権利がない状態なので、
一応は権利者の許諾がなくても、自由に利用することができるという意味ですね。
著作権以外の特許権などの知的財産権についても、
「パブリックドメイン」が使われることもあります。
「パブリック(public)」は日本語で「公共の、公衆の、公開の」で、
「ドメイン(domain)」は「領地、領土、領域、範囲、所有権」なので、
「パブリックドメイン」は、「公の領域」や「公有」といった意味合いから、
「権利が発生していないか、消滅した状態」を指して言います。
著作権などの知的財産権は、
企業や個人に属する権利、つまり私的な権利、私有財産権なので、
それに対する概念とも言えますね。
したがって、使い方としては、
「太宰治の小説って、すでに「パブリックドメイン」なんだよね」
とか
「シカゴ美術館には、ゴッホやモネといった「パブリックドメイン」の作品が飾られているんだよ」
などと言えば、
「ステキ!」「カッコイイ!」となることは間違いありません(嘘)
★注意点①:「別の権利」の存在
ただ、「パブリックドメイン」にはいくつか注意点があります。
まず、1つの対象に、複数の権利が発生している場合があるので、
ある権利については「パブリックドメイン」だけれど、
他の権利は「パブリックドメイン」ではない、といったこともあります。
これは、権利による保護期間の違いなどの理由によります。
例えば、「ピーターラビット」と言うウサギのキャラクターの絵本がありますよね。
僕も子供の頃に読んだ記憶がありますが、
原作者のビアトリクス・ポターさんは、1943年12月22日に亡くなっていて、
絵本の著作権はすでに消滅しています。
しかし、キャラクターの管理をしているフレデリック・ウォーン・アンド・カンパニー・リミテッドという会社が、
「ピーターラビット」に出てくるキャラクターの図柄を、たくさん商標登録していて、
現在も権利が有効に存続しています。
したがって、「ピーターラビット」の著作権は消滅しているけれども、
商標権は存在しているので、
完全に自由に何をしてもいいというわけではありません。
★注意点②:著作者人格権
2つ目の注意点は、「著作者人格権」についてです。
著作者人格権については、34回目の配信でも触れましたが、
「著作権」とはまた別に、創作した人だけが持っている
人格的な価値を守る権利です。
著作者人格権は、創作した人と一心同体の権利なので、
創作者が亡くなった時点で消滅するのですが、
法律上は、「著作者の死後においても、原則として、著作者人格権の侵害となるべき行為をしてはならない」
とされています。
これは遺族などに配慮した規定ですね。
つまり、結局は、パブリックドメインで権利の制限がなくなったとしても、
創作者の意を害するような改変などは認められないことになります。
★注意点③:二次的著作物
3つ目の注意点は、「二次的著作物」についてです。
二次的著作物については、44回目の配信でも触れましたが、
元の著作物をベースにして新たにできた著作物のことを言います。
これは、新たにできた著作物なので、
二次的著作物を利用する際には、
仮に原作がパブリックドメインだとしても、
その二次的著作物の権利者の許諾が必要ということです。
例えば、日本の「古事記」は元々著作権のない時代の作品であるため、
パブリックドメインではありますが、
「古事記」を元にした舞台などは、二次的著作物に該当するので、
無断で利用したり、改変したりすることはできません。
以上、「パブリックドメイン」はコンテンツ利用の可能性を広げる、
とても便利な概念ではありますが、
完全に何してもいいというわけではないので、
その点にはご注意ください。
※配信時点の判例通説等に基づき、個人的な見解を述べています。唯一の正解ではなく、判断する人や時期により解釈や法令自体が変わる場合がありますので、ご注意ください。