美容師Nさん2
Nさんの元で散髪をするようになった2010年当時、僕は会社員であったと昨日のnoteに書きました。
そのあとに脱サラをしてバンド活動をしていた時も、バンドを離れ再就職をした時も、医学部受験の浪人(?)時代も、そして学生となった今も、僕はNさんのところへ変わらず通い続けている。
脱サラをして「バンドマンになります」と報告した時、彼女はどんな顔をしていたっけ。その瞬間のことは覚えていないけど、それからの活動期間、顔を出すたびに「痩せました?大丈夫?」と体調のことを気にかけてくれた。MVの撮影前に足を運ぶと「じゃあ気合いいれなきゃですね」なんて髪型の相談にのってくれたり、一番の勝負公演となった渋谷クラブクアトロでのワンマンでは、若いスタッフさん達と一緒に観に来てくれたことが嬉しかった。バンドをやめると伝えた時も、これも正確には覚えていないけれど、きっといつもの調子で「あら、そうなんですね」と受け止めてくれたんじゃないかな。
医学部の受験を始めたとき、僕は家族以外の誰にもそのことを伝えなかった。Nさんにもそのことは伝えぬまま、その1年半はお店にいっても口を濁していたんだ。
そして大学への入学が決まり、お店に足を運んだ際に「実は」と報告をした。するとNさんは少し驚いた顔をして、「おもしろい人生ですねぇ」と笑う。彼女のお客さんには他にも医学生がいるようで、それからというもの、足を運ぶ際には彼らから聴いた大学生活の話などをおしえてくれるようになった。
「実は私もなりたいなって思った時期あったんです」
以前、Nさんはこんなことを話してくれた。何でも一時期、医者になりたいと結構真剣に思ったことがあったらしい。たしかに、Nさんなら難しい手術を手際よく切り抜け成功させていく、凄腕の外科医として活躍している姿が容易に目に浮かぶ。(いま思うと、気性的に「わたし、失敗しないんで」の人とどこか似ているぞ。)それを伝えると、「そうですかねー、でも勉強がねぇ(苦笑)」と笑うNさん。
Nさんは、店長から創業時に誘われて以来ずっと今のお店で働いているという。いわばNo.2の位置付けで、6,7名という家族のようなスタッフ構成の中、頼れる姉御のような役割を担っている(と勝手に思っている)。お店のスタッフの皆さんともすっかりと顔なじみになり、髪を洗ってもらう際などには若いスタッフの方とも音楽やプライベートの話で盛り上がる。僕が通い始めた時からそれなりの数の人達が入れ替わったけれど、変わらない人たちとはそれなりの長い付き合いだ。出会った当時20歳そこそこだったスタッフの人も、今では頼もしく落ち着いた雰囲気を醸している。そんな姿をみて、不意に年月の経過に驚かされることも。自分も同じだけ、歳を重ねたということか。
ここ数年、父親的存在の店長がchelmicoという2人組女性ユニットにハマり、ライブにも頻繁に足を運んでいるようで、「あの人がいる時は店内でもずっとchelmicoがかかっているから、いなくなった瞬間に若い子に変えさせるんです」と悪戯っぽくNさんは僕におしえてくれる。chelmicoは、いつのまにか自分も結構好きになってしまった。最近は結構名前も売れてきているようです、店長はどう感じているんだろう?
...と、とりとめもなくなってしまったけれど。
何ヶ月かごとに足を運ぶ美容院にてNさんと話すのは、自分にとってとてもリフレッシュできる時間になっている。次に行くのは夏前かな。