歩きながら、自転車乗りながら歌う民の将来
先日、自転車に乗っている時、向かいからそれはそれは気持ち良さそうにシャウトしながら自転車をこぐ男性とすれ違った。
私とすれ違う際は一瞬静かになったが、また後ろから高らかに歌う声が聴こえてきた。私の感想としては「うん、わかるわかる。気持ち良いよね」だ。
何を隠そう、私も歩きながら、自転車乗りながら歌う民だったのだ。
歌うことが大好きで、高校・大学時代は友人とよくカラオケに行った。フリータイムで入ってドリンク飲み放題で数百円と、恐ろしいほど安いプランがあったのでテスト終了後の短縮授業時や講義の空き時間によく通った。
流行りの曲をTUTAYAでレンタルし、ダビングする。曲だけを楽しむ場合ももちろんあるのだが、カラオケで歌いたいがためにレンタルする、なんて場合も多々あった。聴きながら、ガチで歌う。心を込めてメロディに歌詞を乗せる。ああ気持ち良い。
そして、カラオケでお披露目だ。友人と、ゆずをはもってみたり、モー娘。やあややを全力で踊ったりもしてカラオケの室内はいつも汗ばむ陽気だった。人目なんて気にしない、タガを外したもん勝ち。
普段、人前に出て笑いをガンガン取りに行く、みたいなタイプではないのだが、カラオケではオープンマイハートだ。気心しれた友人としか行かないので、いつも全力で歌い、踊った。
その頃から、私はウォークマンで音楽を楽しみながら自転車や歩いている際、公共の道でよく歌っていた。しかも普通の声で。音楽を聴いていたら歌わずにはいられない。誰かの迷惑になるレベルの声ではなかったはず、と信じたい。
気持ちよく歌っていたのだが、前方には神経を配っていた。人影が見えたら、“すんっ”とした顔をして歌うのをやめる。自転車の場合は、しゃーっと去っていけるので、結構ギリギリまで攻めて歌っていた。
恥ずかしいとか関係なく、ただ歌いたかったのだ。プロの歌い手さんのコメントみたいになっているけれども、ただのしがない30半ばを過ぎた女のそれで申し訳ない。
最近は、さすがに一人で自転車や歩いている時は歌っていない。子どもと一緒の時に少し歌っていることはあるのだが、一人の時はやってない。そんなお母さんはいやだ。
…………いや、やってるわ。
私は今車通勤なので、車に乗ることが非常に多い。私、車の中でめっちゃ歌っているわ、と気づいた。
ラジオやSpotifyでお気に入りの曲を流しながら、結構本気で歌ってる。車は最高だ。声が外に漏れないので、歌いたい放題。周囲を気にする必要ナッシング。誰の迷惑にもならない。大人になったからこその醍醐味である。
“歩きながら、自転車乗りながら歌う民”は成長し大人になると、“車の中で熱唱する民”になる。その癖は簡単には治らない。
検証データは私だけなので、異論はもちろん認めます。