見出し画像

深く、しっかり息をして | 読書記録


川上未映子さんのエッセイ集

心に残った言葉たちの記録。

***

真っ白な闇みたいな空間で、言葉にしても誰に言ってもしょうがないようなもので、苦しんでいた。それをどうにか和らげて、また明日何とかやり過ごすちからをくれていたのは、誰かの書いた小説や詩や、そして誰かが鳴らす音楽だった。

何年たってもベリーハード



だから、本当に大切な人とは、できれば離れないほうがいいと思う。一緒にいることがすべていい結果を連れてくるとは思わないけれど、わたしたちはとにかく忘れてしまう生き物だから「今」で繋がっていないと、すぐに見えなくなってしまう。あっけないほどに忘れてしまう。

すべてを忘れてしまう私たちは



読書でも旅でも、それから恋愛でも、それらにおける大きな喜びは、「自分が変わること」かもしれない。

困難としあわせのすべてについて



つまり、読書というのは、どこまでも言葉と自分の心との何かしらの行き来であり運動で、彼女が思わず書き手前に泣いてしまうのは、そのご自身の日々の感受性の運動の、なんというか純粋な余波みたいなものなんじゃないかと思うのだ。

涙のやってくるところ



見送るとき、手を振るとき、思わず泣いてしまう相手というのがいますよね。またすぐ会えるのに。おかしいよな、と思いながらまた目をこする、冬の始まりなのだった。

涙がでる人



わたしたちは、何事であれ、とても忘れやすいのだと言うこと。どんな気分に浸るのも構わないのだけれど、でもその渦中にあっても、わたしたちが忘れたことに気がつかないくらい忘れやすいということは、決して忘れてはならないのだと思う。

いつもどおりに見える初夏に



そう、生きると言うことは、自分ではどうにもならない心とからだが一緒に、なにかを感じつづけることだから、本当はそれだけでもう、精一杯なんじゃないだろうか。たとえ元気がなくたって、笑顔でなくたって、強くなくたって、穏やかにいられること。なんとなく、思いついたときにでも、深く、しっかり息をしてみること。そのあとのことは、そのあとやってくるもに、まかせるような、穏やかさで。

あとがき



***

Hanako連載エッセイ「りぼんにお願い」の単行本化されたもので、川上美映子さんの12年間の軌跡。


川上未映子さんの文は、ひらがなと文のリズム感みたいなものが心地よくて読みやすく、読むと心がかろやかになる。



ぜひ、読んでみてね 🫧

この記事が参加している募集

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?