「Nのために」に寄せて
ふせったーからの再掲。
安藤と成瀬くんと西崎さんについて。
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まず安藤。
「杉下はそんな簡単に助けてって言わない」
「(助けてと言ったとしたら)なんだってする!」
安藤の答えからは、杉下がいかに安藤に助けてのサインを隠してきたかがわかる。
杉下のためなら躊躇なく後戻りのできない橋を渡ることも。
安藤は正しくて美しくて、枷がなく自由に飛んでいける人。ゴンドラで杉下の見たかった水平線を見せてくれて、明るい場所に連れて行ってくれる人。
そんな眩しい安藤に惹かれる反面、杉下は自身の暗い過去や目的のためには手段を選ばない一面(野口氏は近づくために奈央子さんのバルブをいじるなど)が苦しくもあったんだと思う。
安藤には誰にも邪魔されず自由に生きてほしい。
自分が今にも崩れそうな吊り橋の上にいることは絶対に知られてはいけない。
助けてとは言えなかった。
助けてといえば、安藤は全てを捨てても後戻りのできない橋を渡ると知っているから。
それでも、西崎さんのいうとおり、事件さえなければ彼と生きる道もあったかもしれない。
最後まで何も知らされない安藤が、あらためて切なかった…
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成瀬くんの答えは
「呼ばれれば、渡ると思います」
杉下が吊り橋の向こうから助けてと言える相手は最初からずっと成瀬くんだけだった。
島にいた頃の唯一の光で、野望を最初に叶えてくれた人。
島を出た後も、長い間会わなくてもずっと心の支えにしていた人。
誰にも助けを求めず1人で崩れゆく橋を受け入れようとしていた杉下に対して、成瀬くんが名前のつく関係性を相手に求めることなく、「ただ、一緒におらん?」という言葉を選んだところが本当に好き。
何度見ても名シーン。
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そして西崎さん。
杉下と西崎さんが、言葉にしなくても互いの気持ちが手に取るようにわかるのは、2人とも籠の中の鳥だった過去があるからで。
野ばら荘は籠から逃げ出した2人にとってシェルターだったんだろうなと。
杉下が一番望んでいることがわかるから、西崎さんは安藤ではなくて成瀬くんに杉下を託したんだよね。
やるせない展開も多かったけど、杉下が最期に一緒にいる相手として成瀬くんを選び、2人が寄り添う形のラストはすごく美しかったと思います…!