美術館に通うと、今までと違うものが見えるようになるか? その11
「原三渓の美術 伝説の大コレクション」展 横浜美術館 2019年8月25日(日)
明治の好奇者である原三渓のコレクション展。日本の古美術コレクションの広さ深さだけでも想像を絶するものがあったのですが、原三渓の凄さは、それだけにとどまりませんでした。
原三渓は、近代の日本画壇のパトロンでもありました。ただし、そのパトロンっぷりが尋常ではなく、才能ある若手の生活の面倒をみて、自分の古美術コレクションも見せ、若手同士で議論もさせ、その議論に自分も参加し、育て、かつ作品を買い上げるのです。
また、茶人としても一流だったようで、茶道具のコレクションも並々ならぬものがありました。横浜には、三渓園を作り、多くの美術品をみんなで分かち合ってきました。
原三渓はスケールが大きすぎる。
あまりにもスケールが大きすぎて、今回の美術展をみて、こんな感じだったとか、これが良かったとか、その手の印象が残らないのです。なんだか、ぼや~っとした感覚だけがのこる。
改めて、何点かの美術品を見直してみて、やっと頭の中が整理できる、そんな具合でした。
ということで、改めて整理した結果、今日の一枚は、下村観山の弱法師(よろぼし)。六曲一双の金地の屏風 (写真は右隻)。
この屏風に描かれている弱法師の顔がありえん。盲目の弱法師を表現するために能面にヒントを得たと言われると、なんとなくそんな気がしてきますが、なかなかの気持ち悪さです。
このシーンは、盲目の弱法師が、沈む夕日を心眼で見て、極楽浄土を感じるというシーンのようです。弱法師が夕日と相対するなかで、臥竜梅の鮮烈なイメージが浮かんできた、臥竜梅の美しさが極楽浄土そのものなのだ、そんな風に読みとってみました。
横浜美術館は初めて行ったのですが、街全体が新しく綺麗で、とても新鮮な印象でした。
その他、
寝覚物語絵巻 第一段
(原三渓は、後の琳派はこの絵巻から影響を受けたはずだと言ったらしい。文字と絵が混ざりあった感じとか金の使い方が琳派を先取りしているかも)
宮本武蔵 眠り布袋図
(やっぱり宮本武蔵は絵がうまい。特にこの布袋さまの顔がいいね)
井戸茶碗 銘 君不知
(早逝した息子を忍ぶ茶会で出されたとのイワレを知ってしまうと、ひとしおです)
今村紫紅 近江八景
(鮮やかな掛け軸。青や緑が美しい)
横浜美術館で、9月1日まで。