2024年5月後半の日経平均振り返り
① 日経平均チャート
5月後半相場を振り返ると、日経平均株価は高値39437円、安値37617円となり上下値幅1820円と値幅はでたものの、30日の一時900円超の下げ幅があった為でそれまでは1070円ほどで前半の動きを踏襲した相場の流れであった。
② 海外市場
では30日に何があったか振り返ってみよう。
まずは前日の米国株式市場が軟調となり、30日のアジア株が総じて下落したことが重荷となったこと。
③ 米国長期金利
堅調な米経済を背景にインフレが継続し、米連邦準備理事会(FRB)が利下げを先送りするとの見方から、米債券市場では長期金利が上昇。
④ 新初10年物国債
国内では日銀が追加利上げに動くとの思惑から午前の債券市場で指標となる新発10年物国債の利回りが2011年7月以来およそ13年ぶりに1.1%台に乗せた。
このことから国内株式市場ではハイテク株を中心にリスク資産を圧縮する動きが優勢だった。
3月19日に日銀はゼロ金利を解除して以来、金融商品の金利引き上げの裾野が広がってきた。
実生活に金利のある世界の恩恵と負担増、双方の波が押し寄せてきたのである。
恩恵としては、生命保険の予定利率の引き上げがある、住友生命では契約者に約束する利回りを約11年ぶりの高水準に上げると発表した。
個人向け社債などは金利上昇をにらんだ企業が発行を前倒しで発行し投資妙味が増している。
銀行では普通預金金利が0.001%から0.02%に引き上げられた。
負担増としては、住宅ローンの金利上昇、6月適用分の固定型住宅ローンは13年ぶりの高水準をうかがう。
企業の借入金利も上昇してきている。
この様に私たちの生活に直結したところにも表れてきた。
⑤ テクニカル分析「一目均衡表」
そして30日には市場参加者の間では人気の高いテクニカル分析の一つである「一目均衡表」の『雲』の下限を下回ってしまった。これは弱気相場入りのサインとされる。
一目均衡表は日本生まれのテクニカル指標で海外でも『Ichimoku』の名称で親しまれており、国内外問わず世界中の投資家に使われています。
⑥ MBO・TOB
今月の話題として2つ紹介しよう。
一つ目としてMBO発表後に株価が買収価格を上回るケースが目立つことである。
5月15日、物流中堅のエスライングループ本社がMBOで株式を非公開化すると発表した。
TOB価格は1株あたり1460円だ。
翌日から株価は高騰し、16日以降は一貫してTOB価格を上回る。
このままだとTOBに応募するより市場で売る方が有利で、TOBは不成立となる可能性がある。
理由はTOB価格にある。
発表直前の株価に16%のプレミアムをつけたが、PBRでみると0.5倍にとどまる。
TOB価格を超える価格は同業者などによる買収提案を期待していると解釈できる。
なぜそのような期待が浮上するのかというのは、前例があるからである。
⑦ ローランドDG
2月にローランドDGのMBOでは1株5035円で買い付けるMBOを発表した後。
ブラザー工業が1株5200円で同意なき対抗買収を提案した。
結局ローランドDG側がMBO価格を5370円に引き上げMBOは成立した。
ただローランドDGの株価はブラザーの撤退直前には5640円まで上昇した。
この時に買った投資家は1株あたり260円損をしたことになる。
このようにTOB価格を上回る例は他にベネッセHD、大正製薬HD、アウトソーシング、スノーピーク、日本ハウジングなどがある。
MBOでは買い手の経営陣やファンドはなるべく買収価格を安く、一般株主は高くすることが望ましく、利益相反が起きやすい。
そのため経営陣にはTOB価格について説得力のある説明が求められ、後から価格を引き上げるのは簡単ではない。
当初の価格の正当性が疑われかねないためだ。
よって買収価格引き上げへの過度な期待は禁物である。
⑧ NTT
もう一つはNTT株だ。
NTT株は17日の東京株式市場で前日比2円20銭安の151円80銭まで下落し、5月1日から11営業日連続落となった。
11営業日連続で下げるのは、2001年以来23年ぶりで1年3カ月ぶりの安値をつけた。
信用買い残高が積み上がっており、25年3月期の連結純利益の減益見通しなどを嫌気した個人などが、損切の売りを出しているとの見方が出ている。
信用買い残を売り残で割った信用倍率は5月2日の時点で92倍であった。
10日の買い残は2日より減っており、株価が下がる中で、損失を広げたくないと考える個人が持ち高を解消する売りを出したようである。
10日時点で信用倍率は71倍となお高水準で、個人の売りは収まっていないであろう。
NTTは23年7月に株式を25分割し、株価は投資しやすくなっていた。
2月に日経平均株価が史上最高値を更新した後も、NTT株は軟調だったことで、逆張りを好む個人の信用買いが積みあがった。
4月中旬には信用倍率が1995年以降で最高となる122倍まで膨らんでいた。
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