2023年3月前半日経平均相場の振り返り
① 日経平均チャート
3月前半相場を振り返ると、日経平均株価は2月の狭いレンジから3月に入ると一変して大きな動きを見せた。まずは9日に日経平均株価は高値28734円を付け、約7カ月ぶりの高値となった。
実に2月末の終値27445円に対し1289円の上昇であった。
しかし10日より3営業日で1400円の下げとなり、上昇分を上回る下落となってしまった。
② 業種別指数
まずは月初から上昇が目立ったのは鉄鋼や商社などの景気敏感株が広く買われた。
東証業種別指数の「鉄鋼」においては2018年1月以来5年ぶりの高値をつけた。
③ 商社
商社では丸紅、三井物産、三菱商事、住友商事など大手は軒並み上場来高値を更新した。
これは米中の景気への期待が背景にある。
④ 製造業景況感指数
1日に発表された2月の米サプライマネジメント協会(ISM)製造業景況感指数は市場予想を小幅ながら上回った。
⑤ 中国景況感指数
また同日公表の中国の2月の景況感指数は2カ月連続で改善をみせた。
両国の経済活動の底堅さが需要増加につながるとして外需株を中心とした景気敏感株の買いを促したわけである。
⑥ 米長期金利
米経済の強さは物価の高止まりや金融引き締めの長期化につながるとの警戒から、米長期金利は1日に一時4%を超える水準まで上昇した。
⑦ バリュー株
金利上昇で割高な成長株が買いにくいなか、バリュー株でもある景気敏感株に資金が向かったといえる。
バリュー株相場の先駆けとなった海運株の物色も衰えていない。
新型コロナウイルス禍でのコンテナ船特需がはげ落ちて2024年3月期の大幅減益が避けられないが、特需の余韻が残る今期まで利益は好調で高配当は続く、24年3月期の配当についても、高配当を維持し予想配当利回りは4~5%と市場平均を大きく上回るとアナリストたちはみている。
⑧ 裁定取引とは
上記以外にも現物株の上昇に弾みをつけたのが裁定取引のようだ。
現物株から算出する理論価格に比べ割高になった先物を売って現物株を買う裁定取引が増えてた。
⑨ TOPIXと銀行株
東証株価指数(TOIPX)も1年5カ月ぶりの高値2071ポイントをつけた。
相場をけん引したのは上記した外需関連の景気敏感株と銀行株だ。
特に銀行株の押し上げが大きいと言える。
日銀が22年12月に長期金利の上限を引き上げて以降、さらに緩和策を縮小するとの思惑がたかまっており、国内の長期金利が上昇すれば利ザヤ改善の恩恵を受けるとの思惑で銀行株が大きく上昇した。
また東証の「PBR1倍割れ是正」の姿勢も株価上昇につながっている。
⑩ 日銀金融政策決定会合
しかし10日から日経平均株価は下落してしまったわけだが、きっかけは日銀が10日まで開いた金融政策決定会合で大規模な金融緩和策の維持を決めたことを受け、利益確定の売りが膨らんだ。
特に銀行株は急落した、大手メガバンクはもちろん地銀株も売られ、東証プライム市場で銀行業に分類される67銘柄すべてが下落した。
⑪ 米国SVB破綻
日銀が今回の会合で長短金利操作(イールドカーブコントロール、YCC)の見直しなど金融政策の修正に動くとの思惑が銀行株高を支えていた分、利益確定の売りがでやすかったと言える。
そして米国のシリコンバレーバンク(SVB)の破綻も売り圧力となった。
⑫ ゆうちょ銀行
最後に、いま市場で注目されている「ゆうちょ銀行」の売り出しついて書いておきます。
ゆうちょ銀行は東証プライム市場を維持するため、浮動株比率を上げなければならない。
その為、大株主である日本郵政の持ち株を市場に放出する必要がある。
今回は国内売出で7億5756万株と海外売出2億1779万株となっており、約1兆2000億規模の超大型ファイナンスである。
ただしこの売出を完了しても日本郵政の持ち株比率はまだ60%強である、したがって将来的にまだ売出が行われることになる。
必然的に失敗したくないところではあるが、どういう展開になるのか注目しておこう。
ちなみに売出価格は1131円。
なおこのファイナンスにおける安定操作期間は15日までである。