データドリブン経営について考える
こんにちは!今回は、「顧客視点のデータドリブン経営」というテーマでお話しします。
今回は高級ホテル・高級旅館専門予約サイト「一休.com」の社長である榊淳さんの"Data is Boss"の本のエッセンスを基に、そのポイントを詳しく解説します。
なお、榊さんは戦略コンサルティングファームのボストン・コンサルティング・グループやアリックスパートナーズ出身の元コンサルタントになります。
データドリブン経営とは?
この本では、データ、データドリブン、データドリブン経営を以下のように定義しています。
・データとは:隠れた価値を教えてくれるもの
・データドリブンとは:データ(≒定量的な顧客理解)主導で意思決定すること
・データドリブン経営とは:ビジネスのあらゆる局面で、データ(≒定量的な顧客理解)主導で「誰に何をするか(=経営)」の意思決定をすること
つまり徹底的なデータ・ファクトに基づいて経営レベルの意思決定をする
(=感覚的な思い付きでの経営判断をしない)ことです。
顧客視点の重要性:"Data is Boss"の意味するところ
"Data is Boss"というフレーズは、P&Gの「Consumer is BOSS」という理念から着想を得ています。これは消費財メーカーであるP&Gの行動・意思決定には常に顧客が中心にいる、ということを意味しています。
榊さんはオンライン予約サイトである一休の社長として、データが顧客理解の中心にあり、データを徹底的に分析することで、ターゲット顧客の深い理解に繋がり、自ずと企業として取るべき打ち手が見えてくる、という考えをされています。
データドリブン経営のステップ
大きくステップを以下の3つで定義されています。
①データでビジネスを変える課題を「見つける」
②データ分析課題を「解く」
③データ分析結果を「役立てる」
この時にビジネスをよく理解しているビジネス人材が①、③のプロセスを担当し、②のデータ分析はデータサイエンティストに丸投げ、というのが良く起こりがちなワナなのだと強調されています。
・一般的にデータ人材は問題を解くことにモチベーションが高く、ビジネスに役立つかどうかにはあまり関心がないことが多い
・一方、事業部のビジネス人材はデータ分析の技術を難しく感じるあまり、データ分析でビジネス成果を上げるところまでを期待して、丸投げしがち
→つまり、このようなビジネス人材とデータ人材の傾向をそのままにしたナチュラルな分業スタイルでは、決してデータドリブン化は進展しない
その時に①、②、③のプロセスを一気通貫のビジネスプロセスとして1人が責任をもって行うことが重要だと言っています
・1人が①~③で全部やる単独型もあれば、
・①~③を統括するリーダーを1人置き、個々の作業は分担する、という形もあります
ちなみに驚くべきことに一休では、社長の榊さん自らがデータサイエンティストとして、単独型で毎週日曜に分析したレポートを作成し、全社員に配布しているそうです。
・従って、一休では下の人が数字を取り纏めて社長に報告する、という作業は一切ないそうです
・経営コンサルをしていて、上記のような企業は初めて聞いたので驚きでした
顧客視点のデータドリブン経営の実践
ターゲット顧客の理解が極めて需要
データドリブン経営における戦略とは「誰に、何をするのか」というシンプルな問いに答えることです。特に「誰に」の顧客理解が極めて重要です。
・誰に:自社の商品を最も喜んでくれそうな顧客(=ターゲット顧客)は誰なのか?
-例えば、最も重要なお客さんがヘビーユーザーだとした時に、その顧客はどのような行動・特性をもつお客様なのか、を明確にすることが重要です
-特に重要なヘビーユーザーの継続利用率でウォッチし、顧客セグメントごとにの変動を踏まえ、今の施策が受け入れられているのか、下がっているところがあると、それがなぜなのか、までブレイクダウンして解像度を高めていくことが必要です
・何をするか:ターゲット顧客に何をすればもっと喜ばれるのか?
-上記の顧客理解ができているのであれば、その顧客に何をすれば喜ばれるのか、は自ずと見えてきます
データに基づく定量分析と定性的理解の両輪での理解が必須
データに基づく定量的な顧客理解と、インタビューなどに基づく定性的な顧客理解は、どちらも必要不可欠です。
本質的には、見ている顧客は同じなので、「定量的な顧客理解=定性的な顧客理解」となるはずです。
それが異なる場合は、どちらかがおかしい、ということになり、このとき、 とるべき策はデータ分析を掘り下げることになります。
顧客軸を3つの軸で分析する
一休では顧客軸を①利用金額、②利用目的、③顧客アクション、の3つで見える化しています。なお、大多数の企業は顧客全体の管理になっています。
・①利用金額:ヘビーユーザー、ライトユーザー、休眠ユーザー、新規顧客、のような形での分類です
-全体として利用率が上がっていても、各セグメントごとの上がり下がりまでみて、どの層がうまく行っていないのか、を明確にすることが重要です
・②利用目的:レジャー、出張などの目的別の分類です
-レジャーは宿の魅力などで需要を喚起しやすいですが、出張は顧客に出張需要が発生しない限り需要は出てこず、むしろ需要発生時に素早く予約できることが重要になります
・③顧客アクション:「エリア」で検索する顧客と、「宿」で検索する顧客
-「エリア」で検索する顧客はまだ宿が決まっておらず、顧客の好みに合う宿のレコメンドがポイントになります
-「宿」で検索顧客は目星の宿は決まっているので、各社の料金を比較しているので、他社よりお得なことが重要になってきます
なお、一般的なデモグラ(性別・年齢)のような切り口ではあまり示唆が得にくく(同じ女性でも全然行動が異なる)、上記のようなメッシュで分析していくことが重要になります。
収益性のレベルまで見に行く
一部の企業は売上の分解までは顧客セグメントでやっている企業はありますが、一休では利益ベースで見えるようになっています。
・1件1件の売上レコードに対し、直接費用、粗利を計算しているそうです
・直接紐づかないコストも売上比で配賦、のようなレベルでやっています
このようなことを行うことで、本当に収益性ベースで問題が起こっていないかをつぶさにみてすぐに対応を行うことができたり、LTV(顧客生涯利益)ベースで、どの程度で黒字化していくのか、もウォッチしています
まとめ
いかがでしたでしょうか?
顧客視点のデータドリブン経営は、現代のビジネスにおいて欠かせないアプローチです。
戦略コンサルタントとして一時点の戦略を描くことはできますが、刻一刻と状況が変わる中での迅速な打ち手の実行においては、データドリブン経営の"仕組み"が極めて重要であるように感じました。
経営コンサルのテーマとしても、データドリブン経営はホットな領域ですし、私自身コンサルティングファームのパートナーとして、営業開拓を行う際に(取れる情報は限られますが)よりデータに基づいた提案活動を行っていきたいと思いました。
これからも、皆さんにとって役立つ情報を発信していきますので、どうぞお楽しみに。
BizInvestor
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