ユニコーン「すばらしい日々」レビュー ~忘却の長い時間軸を俯瞰してとらえた名曲~

 毎週のようにメガヒットが誕生していた1993年。
 メガヒットはしていないが、心の奥にずっと残り続けていた作品がユニコーンの「すばらしい日々」だ。

 ユニコーンの存在は知っていたが、この曲を聴くまでは、足を止めて聴くほどではなかった。
 だが、この曲を初めて聴いたとき、これは大ヒットするに違いないと確信した。
 そんな確信をよそに、オリコン最高6位、19万枚と、当時では、そこそこのヒットに終わってしまった。

 当時は、ポップで陽気で派手な楽曲が好まれた時代だった。
 退廃的で倦怠感があって、わだかまりすら感じるAメロ。Bメロはなく、Aメロを2回繰り返し、サビに入る。

 2番は、Aメロさえなく、いきなりサビに入り、そのまま大サビが続いて終わる。サビで、自らを奮い立たせるようなメロディーに乗せ、がむしゃらに生きつつ、時おり昔を思い出す主人公。
 そして、意味が良く分からなかったサビのラストの詞。

 高校生だった私は、一体、ラストが何を意味するのかすらほとんど考えずに、分からないまま聴いていた。だからこそ、ずっと心残りになって、気に留めていたのかもしれない。
 そもそも、私は、この楽曲を進路が分かれた若い男女を描いた歌だと思っていた。

 この楽曲を最後にユニコーンは解散。この楽曲を作った奥田民生は、ソロで大ヒットを連発し、Puffyをプロデュースして、こちらも大ヒットを連発した。

 それでもなお、私の中では「すばらしい日々」が最上位に位置していた。

 2009年、ユニコーンは、オリジナルメンバーで16年ぶりに再結成する。
 その後、「すばらしい日々」が解散と再結成を暗示した楽曲だったという評論をどこかで読んだ。

 そういう観点で聴くと、私がずっと気に留めていた詞の意味も、納得できるようになった。

 当時、ユニコーンは、既にメンバーの川西幸一が脱退し、バンドも解散することが決まっていた。
 それぞれに進みたい道が分かれ、同じ方向へ進む意欲がなくなっていたのだ。

 「すばらしい日々」のプロモーションビデオでは、川西を除いた4人のメンバーしか映っていない。しかも、全編モノクロで、ラストでは道を下りながら、4人がそれぞれ別の道へ入って歩いていく。

 この楽曲に流れる退廃的な倦怠感やわだかまりは、彼らの心情そのものであったのだ。
 別々に自らが歩みたい道を進み、それでも、ときどきは昔を思い出してしまう。
 でも、過去を懐かしむでもなく、今を必死に生きようと思い直し、またがむしゃらに進む。

 そうしているうちに、歳をとって、きっと君は、昔の僕を忘れてしまうだろう。
 そうすれば、また新鮮な気持ちになって、再会し、一緒に歩めるに違いない。
 サビのラストに出てくる「すぐに」という言葉は、主人公のいつか、いつかきっとという想いが乗り移っている。忘却の時期が訪れれば、すぐにでも行動を起こすのだ、という主人公の強い意思だ。

 奥田民生は、そんな秘めた気持ちを「すばらしい日々」という楽曲に込め、若い男女が進路を分かれる歌のような装飾を施し、普遍的な共感ができるようにして、メガヒットブームのヒットチャートに送り込んだのだろう。

 それから16年がたち、再結成をしたユニコーンの「すばらしい日々」を聴くと、16年間の日々の流れがまさしく「すばらしい日々」として思い出される。
 今となっては、長い時間軸を俯瞰してとらえた、記憶に残る名曲だ。

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