ASKAニューシングル「笑って歩こうよ」レビュー
きっとASKAさんのファンは、繊細な人が多い。
痛めた心、沈んだ心に寄り添ってくれる温もりと癒しを感じさせてくれる楽曲が数多くあるからだ。
「笑って歩こうよ」も、そんな楽曲である。
イントロ、Aメロ、Bメロと切ないメロディーが続く。
コロナ禍の中、先が見えない不安と孤独にさいなまれる感情を表現する。
私も、コロナ禍になってから、慣れないステイホームやテレワークで心身のバランスを崩し、さらには病気になって入院する羽目になってしまった。
この1年は、かなり心が沈んで、一体これからどうなってしまうんだろう、という不安しかなかった。
ASKAさんも、ライブツアーの残り2本が延期を経て中止になり、ライブ活動再開の目途も立たなくなり、きっと心が沈んでいたのだろう。
不安と孤独を吐露しながらも、サビでは、そういったものを丸め込んで「笑って歩こうよ」と促す。
その丸め込む「白い蝶々の羽根のカーテン」が懐かしさとともに、平穏で幸福な日常の象徴として、前向きな力を持って入ってくる。
このカーテンとともに、私の耳に残って離れないのが「悪い噂をされても黙って」というフレーズだ。
すぐに思い出したのがチャゲ&飛鳥時代の名曲「歌いつづける」。その中でASKAさんは「汚れた口の噂あるけど」というフレーズを使用している。
当時のASKAさんは、全身全霊で歌い続けることによって、噂を払拭しようとした。
その後も「月が近づけば少しはましだろう」では、いろんなことを言われて傷ついた心に対し、ベッドで朝から夜まで眠ることによって、払拭しようとした。
「Too many people」では、噂に耳をふさぎたくなって、自らの言葉で語らせてくれと叫んだ。
そんなASKAさんが今、噂なんて無視して「笑って歩こうよ」と歌っている。
コロナ禍で世界中が満遍なく沈んだ今、噂なんて、ごく些細な出来事にすぎない、という達観にたどり着いたのだろう。
前向きな考えと笑顔は、自らだけでなく、周囲にも好影響を与える。今、こういう時代だからこそ、笑顔の波及効果を広げて、社会を明るい方向へ変えていかなければならない。
そんな想いが繊細に伝わってくる名曲である。
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