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ASKAソロアルバム『ONE』推しはいますか?
ASKAソロが活発化した頃、『NEVER END』を好きな人が多く、コアなファンは『kicks』が好きで、間に挟まれたアルバム『ONE』推しの私は、少し肩身が狭い思いをしていた。
昨年12月に『ONE』もサブスク解禁となったので、そろそろ再評価されるだろう。そう軽く考えていたのだが、無念なことにどの曲も再生数が伸びていないのだ。
2025/2/8現在のYouTubeサブスク再生回数は以下のとおりである。
風の引力:2305回
ONE:1147回
草原にソファを置いて:6129回
バーガーショップで逢いましょう:2625回
僕はすっかり:3910回
共謀者:1587回
帰宅:1867回
ブラックマーケット:1658回
君が家に帰ったときに:1973回
ID:1185回
アルバム『ONE』がなぜここまで聴かれてないか、と言われると、チャゲアスサウンドの延長線上として聴ける『NEVER END』、尖ったロックサウンドで衝撃を与えた『kicks』の間に挟まれた『ONE』に地味な印象があるからだろう。
それでも、私がこの3枚の中で圧倒的に『ONE』を聴いているのは、疲れた心と体を癒してくれる3曲があるからだ。
それが「風の引力」「草原にソファを置いて」「帰宅」である。
それまでASKAは、初期の女歌からブーム期のラブソングなど、主に恋、失恋、恋人との架空の物語などを描いて、自らの実生活とは一線を画すフィクションを歌ってきた。
前作の『NEVER END』では、チャゲアスよりは物語性は薄れていて、タイトル曲「NEVER END」は、ASKA自身の心境を描くエッセイと言ってもいい作品だ。それでも「晴天を誉めるなら夕暮れを待て」や「月が近づけば少しはましだろう」では恋や恋人というフレイズを登場させ、物語性をまとっていた。
しかし、『ONE』の「草原にソファを置いて」「帰宅」は、もはや等身大のASKA自身を隠そうとしていない。
歌詞の中から、恋や恋人といったフレイズを消し去り、自らの出来事ととらえれるであろうことも隠さず、心情の吐露を表現したのだ。
つまりエッセイが歌になっている。
「草原にソファを置いて」
「草原にソファを置いて」は、ASKA自身が持っている数多くの苦悩と孤独を最初は切なく語りかけ、そして中盤では激しい心の叫び、そして、終盤では達観へと至る構成になっている。
一度聴いただけで心に深く刻み込まれ、気分を軽くしてくれる楽曲なのだ。
そして、「帰宅」は、朝方まで仕事をして心身の限界を感じながら、様々なものを犠牲にしてしまっていることへの自戒が浮き彫りになってくる歌だ。
さすがに近頃は、朝方まで仕事をすることはなくなったが、それでも深夜残業が続くと一般社会からの疎外感にもさいなまれ、心身の疲労で活力を失っていく。
そんなとき、この「帰宅」は、主人公の心境と重なり合い、共鳴するように何とか今を変えなければという気持ちを奮い立たせてくれる。
「帰宅」
この2曲に匹敵する癒し効果を持つ「風の引力」も、恋人と過ごす場面を歌ってはいるものの、ASKA自身の心境が垣間見える。
日常的に起こりがちな煩わしいトラブルや不快な思いをさせられたことなどへの浄化を歌っているからだ。
「風の引力」
聴いているだけで心が浄化され、心に降り積もった重たい物が取り除かれていくような感覚になる。
今や「風の引力」「草原にソファを置いて」「帰宅」は、私の生活に欠かせない重要な楽曲になっている。
だから、私は、これからもアルバム『ONE』を聴き続けるだろう。
ASKAファンの中に、私のようなアルバム『ONE』推しの人は、どのくらいいるのだろうか。
ぜひ『ONE』の魅力を語ってほしいところである。