ASKA「幸せの黄色い風船」レビュー
e-onkyo「Weare」 ASKA「幸せの黄色い風船」
新型コロナウイルスが日本で感染拡大し始めてから、一気に世間の価値観が変わってしまった。
当たり前だったことが当たり前でなくなり、すさまじい勢いでオンライン化が進んでいく。
得たものも大きいが、失ったものも大きい。人と人の触れ合いが極端に減少し、接客が必要な業種が苦境に陥っている。
音楽業界も、まさにその1つだ。
ASKAは、自らとファンの境遇に重ねていく。
CHAGE and ASKAとTUG of C&Aの境遇から、ASKAとFellowsの境遇へ。
ASKA自身も、メジャーからインディーズへ、既婚から独身へ。
なんか今、世の中が僕たちの真似をしているみたいだね、と。
だからこそ、今必要なのは「ロマン」だ。と、ASKAは、歌う。
人々の心が沈んでいるからこそ、明るく前向きな気持ちで夢を持つことが大切だ。
そうすれば、打開する道は開けてくる。
だって、ASKAとFellowsは、もはや立ち直れないのではないか、と思えた境遇から、鮮やかに立ち直ったじゃないか。
この曲で描かれる主人公の発想は、常にポジティブだ。
たまたま見た時計の時間が昨日と同じだったら、そこに幸せを感じる。芽生えた愛に永遠を感じる。
そして、みんなで幸せの黄色い風船を空に向けて放ち、新しい幸せを感じようじゃないか、と扇動するのだ。
「黄色い風船」は、おそらくアメリカ民謡「黄色いリボン」や日本映画『幸せの黄色いハンカチ』によって、黄色が幸せを願う象徴となっているのが起源だろう。
私は、この楽曲を聴きながら、「みんなで幸せになりたいね」と歌った名曲「世界にMerry X'mas」の理念を思い起こした。
ASKA独特の甘く優しいラブソングの歌い回しでありながら、壮大な人類愛を歌いあげているからだ。
そして、Cメロにレゲエを取り入れて、強く印象づけているのも聴きどころ。時計から得た幸福と、自らが想起したおとぎ話を膨らませながら、実際に膨らませる黄色い風船と掛けている。
早くコロナ禍を克服し、世界中のみんなが幸せになろうよ。
「歌は世につれ世は歌につれ」
人類愛を歌ったこの楽曲が連鎖するように世界中に広がり、幸福が広がることを願っている。