曽水に生きて 成瀬正成 下 

19大御所家康公との別れ

小吉にとって人生最大の影響のあった元和2年が明けて正月21日、大御所家康公は、大好きな鷹狩の最中に、突然倒れた。この事は家康公が高齢でもあったため、周りの皆を心配させる出来事ともなった。
小吉は家康公が倒れた時からずっと心配をして、駿府城に宿直までして見守った。いつも以上に。その姿を見られた家康公は、床に横たわりながら、小吉に必ず毎日日が落ちると「湯漬でも食べていけ、小吉。食べ終わったら、もう今日は、下がっても良いぞ」と幼い時と変わらず、声をかけてくれた。しかしその優しさが、小吉をさらに不安にさせた。

ここから先は

5,219字

¥ 250

この記事が気に入ったらチップで応援してみませんか?