サインデザインに役立つ最初の5冊+おまけ
サインの作品集以外で、サインデザインを学んだり実践に役立てたりするのに良さそうな本をまとめてみました。現在は一人でプランニング、デザイン、監理などもしていますが、将来的に仲間が増えたらまずこれを読んで欲しいなという視点でのチョイスです。
伝えるデザイン: サインデザインをひもとく15章
帯に「サインデザインの教科書」とあるように教科書的な一冊。まずはこれを読んでくださいと言えるくらいバランスのいい本です。サインとは何か、記号論的な話、実践におけるポイントなど、現在SDA(日本サインデザイン協会)所属の第一人者たちが各章で解説しています。サインデザインが何を見つめ、何をやっているのかが分かりやすくまとめられた一冊。(2024年6月現在、定価は2600円ほどですが、価格が上がっているようです)
ひと目でわかるシンボルサイン: 標準案内用図記号ガイドブック
新しい本ではありませんが、実践の基本的な法則やルールがまとまっているので持っていて損はないと思います。案内用図記号の基本はもちろん、例えばサインの適正高さ、距離に対する図記号のサイズ、図記号と和文欧文比率目安など、サインデザインの基礎的なポイントが分かりやすく解説されています。
なお、標準案内用図記号の項目やガイドライン等は出版以降も改訂されていっていますので、以下から最新の状況をご確認ください。
タイポグラフィの基本ルール ―プロに学ぶ、一生枯れない永久不滅テクニック―
建築出身の私にとって、文字を扱う基本ルールを押さえるための一冊で、先生のような存在。紙などのグラフィック系のデザインのための項目も多いですが、文字の構成要素、文字詰めに関するところ、縦組みの際の数字の扱いなど基本ルールもしっかり入っています。私も時々復習するために参照しています。
建築知識2022年5月号 建物種類ごと用語図鑑
建築物の内外のサインを手がけることが多いのですが、施設のタイプによって色々と特殊な施設や用語が出てきます。病院、図書館、音楽ホール、ホテル、学校など、それぞれの用語が図とともに詳しく解説されていて読むだけでも楽しいですし、設計者とのコミュニケーションにも役立つ一冊。
公共交通機関のユニバーサルデザイン: 福岡市営地下鉄七隈線トータルデザイン10年の記録
最初の本が教科書なら、これはバイブル。福岡市営地下鉄七隈線はユニバーサルデザインと環境トータルデザインの傑作と思っていますが、その設計過程と調整の記録が詳細にまとめられています。なんと課題抽出から完成まで10年くらい。サインデザインは空間の他の設計者と関わるものなので、空間をひとまとまりにすることを考える際に参考になります。…というよりもっと頑張らなければという気になります。
おまけ:もう一歩先に
英文サインのデザイン 利用者に伝わりやすい英文表示とは?
和英表記にすることはよくありますが、単に英語に訳しただけでは伝わらないものです。この本では、これじゃわかりにくい日本の英文サインや大文字にすべき部分の標準ルーツなどの具体例も挙げながら、どうすれば伝わりやすいものになるかを解説しています。モノタイプの小林章さんらによる説得力のある一冊で、英語話者でない私には必携。「公共サインに自分ルールは要らない」という言葉、刺さります。
UXデザインの法則 ―最高のプロダクトとサービスを支える心理学
サインは空間のUXをつくるものであるという考えから。単なるUXデザインの技法本ではなく、人間の認知に関する法則がUXにどう関わるかを解説しています。例えば普通の人が短期記憶に保持できるのは7(±2)、という「ミラーの法則」(ただしその限りでない、というところもきっちり解説あり)など、サインデザインだけでなく他のデザイン分野にも役立つ内容だと思います。特に大きな組織の方と仕事をする際に「その根拠は?」と問われた時にも役立つかも。
SDA賞受賞作の中から好きなものについて話すのもいい
サインデザインの範囲は一般的に思われているより広いと思っています。毎年面白い、すごい作品が出てきていますので、まずは「お気に入りどれ??」とワイワイ話したいですね。最新の受賞作だけでもぜひチェックしてみてください。