犬のピピの話 320 犬と同じ高さ
しばらく、そんな風を見たあとで、わたしたちは立ち上がり、庭をわたって、こんどは玄関ポーチの白いコンクリートの上に、並んで座りました。
目のまえに、ほっそりしてまだ若いライラックの木の、日をとおしてところどころ透きとおった場所が黄緑いろの、やさしげな葉峰(はみね)が見えています。
その向こうがわに、夏をひかえた南の山が、もうすっかり大きくふくらんでいます。
こうやって、ピピと同じ高さになって見あげると、世界はいつだってずっと大きく、あざやかに動くのです。
夕闇がくるころ、わたしとピピは、また勝手口の台の上に、くっつくように座りました。
わたしが台のまんなかに、ピピはいつも右どなりにすわります。