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風の歌を聴きました

村上春樹の本をはじめて手に取った。タイトルは、『風の歌を聴け』。
女性作家の書いた女性が出てくる本か、これまた女性作家の書いた美味しそうな食べ物が出てくる本のどちらかを読みがちなわたしにとってはかなり珍しいチョイス。まあ、同じテイストの本ばかり呼んでいると疲れてしまうことって、たまにある。
……よね?

とはいえ、なんでこの作品?という感じではある。わたしは村上春樹は全くの未履修だけど、この本が(彼のデビュー作ではあるものの)Apple Musicのプレイリストで言うところの「はじめての村上春樹」の1曲目ではないだろうということはなんとなくわかる。多分。違うかもだけど。
でも、テイストが自分に合わなくても読み切れそうな薄さとそこまでショックじゃないお値段、そして大学4年の夏というわたしにとってタイムリーな時期を描いていること。これらが決め手となり、この本をお迎えするに至った。

で、内容は、正直あんまよく分からなかった。全てを分かりやすく語るタイプの作品ではないので、多分ちゃんと考えながら読まないと咀嚼できない。ちゃんと考えながら読んでも分からないかもしれないけど。
わたしはコインランドリーで冬用布団を(今さら)洗っている間に店内を流れるやたらポップなBGMを聴き流しながらこの本を読んでいたので、正直そこまでは行けてない。一応数十年前の日本のどこかの港町が舞台みたいだけど、もっと昔の海外のことのようにも感じられる、どこか遠い感じがする話だった。なんかちょっと翻訳小説っぽい感じがしたせいもあるかもしれない。どことなく英語から訳した日本語のような空気感が漂っていた気がする。

そんな感じで、内容についてはたいして何も言えないのだが、読んでいてなんとなく分かったことがある。それは、どうやら村上春樹はややこしい人間らしい、ということだ。そして、ややこしい人が生み出したややこしいものを、内容の好き嫌いは別にしてけっこう喜んで受け入れてしまう自分がいることに気づいた。
たぶん大学に入りたての頃の自分はそうじゃなかった気がする。クリーンであることを心から望んでいたし、そういった人の厄介さみたいなものをどちらかというと疎んでいたような。

いろいろな人に関わり、お酒も飲んで友人のいろんな面も見て、ややこしい人間になんだかんだと好意を寄せてみたりして……みたいな日々を経て、まっすぐな青春小説をいつの間にか読まなくなり、スポーツドリンクのCMソングとかへの関心も薄れ、何かしらこじらせていそうな人の文章や音楽を聴いてその人のややこしさをニヤニヤしながら眺める、そんな人間になりつつあるのかもしれない。文章にしたらだいぶキモい。けど事実なんだから仕方ない。し、人間ってたぶん大体キモい。

まあでも、人ってややこしいとことか厄介で面倒くさいところにこそ本質が見えるというか、その部分に好感を持てるのであればそれはけっこう気が合うってことなのかもしれないなとか、思いました。
ちなみにわたしの仲の良い友人たちはわたしの厄介なところを見聞きするとすごく嬉しそうにニヤニヤしてきます(いつもありがとな)。

……少し話は逸れますが。
実はこの本を買ったときに夏目漱石の『文鳥・夢十夜』も一緒に買ったのだけれど(この本は私のアルバイト先の読書好きのパートさんによりわたしの今年の夏の課題図書に設定されている)、その『文鳥』も漱石の拗らせが全開になっていた。大切なはずのものを大切にできないことを受け入れられず、だが心の底では何となくそれを分かっている淋しさ。
この本を薦めてくれたパートさんに「漱石ってモテなさそうって思いました」と話すと、彼女は、漱石はとある失恋を生涯引きずっていたらしい、と教えてくれた。ちなみに漱石のややこしさはわたし的にはちょっと仲良くはなれなさそうだけど遠くから眺めている分にはおけ、って感じでした。

で、村上春樹のややこしさはというと、今のところそんなに嫌いじゃないです。

あとは文中でも触れられていた不毛さ。けっきょくこの日々がわたしにとって何だったのかいまいちわからないというか、分かりやすく前へ前へと進むわけではない日常の、じめじめと身体にまとわりつくような気だるさとか、あとは自分はその場にぼうっと立っているだけなのに周りは勝手に変わっていく感じとか、なんとなく心当たりあるなって思いました。

てなわけで、ダラダラと取り留めのない文章でしたが、読書感想文おわり。

この本はいつかまた読み返すと思います。多分ね。うん。

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