【イラスト小説】”チョコレート”が甘いものになった瞬間
「バレンタインデーだからチョコって…
私が食べられないの、知ってて用意したの…!」
誰もが当たりまえに、気軽に美味しく幸せそうに食べているチョコレート。
―――私にとってあれは、私を殺してしまえる危険なお菓子だった。
ある日彼女に、バレンタインデーにサプライズがある と言われたことから
ずっと私は、「そのバレンタインデー」までワクワクして過ごしていました。
ほんと、なんだろう? 指輪? 花? 詩?
・・・でも実際は、”あの”チョコレートだったのです。
チョコレートからとっさに目を逸らし、彼女への怒りがこみ上げてきた私は
コートをつかみ、その場から飛び出していた
待って、聞いて と彼女の声がする
「これは本当のチョコレートじゃないの。アレルギーがあるって知ってたから、代わりに作ったんだよ」
驚いた。
箱を受け取って中身を見ると、チョコレートに本当に似せているだけで、そこに並んでいたのは
木の実、ドライフルーツ、豆腐、ハチミツ…それぞれ違う素材 でできていたのです。
「全部食べられるものだから大丈夫だよ」と彼女は笑った。私は「こんなに苦労して作ってくれたの?…ごめんね、ありがとう」と思わず彼女に抱きついていた。
それからして私は一つ口に入れた。それはもう甘くて美味しくて。彼女も同じものを食べて微笑んでくれていて。
―――私たちは幸せなくちづけをした。
”あの”チョコレートが甘いものになるなんて、生まれて一度も、思いもしないことだった
(おしまい)
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