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ふーくろはいーらないんじゃぴょーん

池袋の西口(北)にある中華食材屋さんに行くと「×××マー?」とレジで言われる。実は知らないだけでいろいろあるんだろうけど、よく行くのはビルの4階にある友誼商店というお店。多分とってもメジャー、いつも中国の人らしい人がたくさん出入りしている。
家で中華って、いろいろミックス調味料で簡単にそれらしいものができるから、よく作るけど、なんか違う、現地とか店で食べるごちそうじゃないお惣菜って、材料が同じでも何か違うよなあと思っていた。醤油とみその他に柚子胡椒とかワサビとか、発酵系調味料とか、ウナギに山椒とか、和食でもひと技添える何かってあるじゃない、それらしくなるような。

生きた鯉まで売っているこのお店に物見遊山で通っていて、最初羅漢果があったり、春雨がいっぱいあったり、ハーブやスパイスや乾物が安かったり、餃子の皮とか花巻が安かったりで楽しかった。興奮が冷めてくるといつも買うのは、中華の調味料とか腐豆腐なんかと、スパイス類、十三香だけになった。五香粉ってあるでしょ、入れると中華になるあれ、あれはちょっと八角が強すぎる気がしている。でも13種類も入っているので八角は控えめ。一方でウイキョウの香りがきつく感じる気はするけど、気に入ってうちでは中華だけじゃなくて、カレーにもクリスマスのフルーツケーキにも入れちゃっている。八角、ウイキョウ、山椒、ガランガル、オレンジの皮、黒コショウ、ナツメグ、シナモン、しょうが、甘草、シャジンの花、グローブ、ビャクシの葉が入っているんだって。世界にはカレーじゃないスパイスミックスってあるんだなあって、普段の炒め物やあえ物に使うと、一気に普通の総菜中華な感じの味になる気がするのよね。お母さんの味的な。

で、こういうラインナップで買い物をするとレジの人に「×××マー?」と言われる、多分「レジ袋がいるか?」と言っている気がして、中国語が上手な人に聞いたら「ブーなんとか(いりません)」とか言えばいいって言われたけど、中国語の発音も単語もわからない私がうっかりそれらしいこと言って「いーらないんじゃあーぴょーん」とか言ってたら恥ずかしい。なので、普通に日本語で「袋はいりません」ということにしました、池袋だしね。

どうしてそんなに「お母さんの味」を追求するかというと、理由があって、30年くらい前に池袋の西口に「屯」という居酒屋があった。そこは中国で料理を習ったというおばさんが運営していて、八角の風味のモツ煮とか、平打ち面の炒めそば、汁そば、えも言われんスパイシーなつまみ類、簡単に中華というには、どこかもっと荒っぽくて、遥か大陸風の香りがする料理で呑める店で。五加皮酒とか、白乾児酒とか中国の強い蒸留酒をぐいぐいのんで、腰が立たなくなるくらい酔っぱらうのが常だったのよね。立ち上がれると思うとくるっと転ぶみたいな。でもいつのまにか閉店してしまい、屯のおばさんは気風がよくてカッコよかったけど、あれで結構高齢だったから、誰も承継せず、あの味は失われてしまったのだろうかと思うと、あの味を再現できないかなあ、と探していたのです。ある意味、十三香はそのヒントになるような。最後に缶に入った何かの粉を振りかけていたんだけど、じゃりっとするあれは多分味の素だった気もするけど…きっと他にも秘密の味がある?日々それを追い求めていたりします。