小説が書けない人は、登場人物から書いていない
多くの小説作法の本では、登場人物→ストーリーの順で書くことをおすすめしています。しかし、その登場人物の書き方がイマイチわかりにくいことが多いです。
どうすれば登場人物を書けるようになるでしょうか?その答えは、「登場人物に異常さを持たせる」ことです。
「小説は異常な事態を書いたもの」
こんなことを言った人がいるそうです。この考えを一歩進めて、「異常な事態は、異常な人物、異常な環境によって起きる」というのが私の考えです。
「でも、異常ってどんな状態?」
こう考えると、なんだか難しい感じがしますよね。「異常な人物って言ったら、猟奇殺人鬼とかそういう人のことかな…」とか思ってしまいます。
たしかに、猟奇殺人鬼とか超能力者とかで物語を作ることもできます。でも、そういう人が出てこない物語もありますよね。
それでは、「異常」を「特徴がある」と言い換えたらどうでしょう?
人にはそれぞれ特徴があります。見た目が可愛い、足が早い、頭が良いなどです。もちろん長所だけでなく、ビビり、ブサイク、はたまた窃盗癖があるなども特徴です。
登場人物に派手な特徴があると、物語は作りやすくなります。しかし、派手な特徴がなくても、何かしらの特徴ある人物がいれば、物語は作れます。
人には何かしら特徴があるのだから、あらゆる人が物語の登場人物になりえるのです。
多くの文学作品がその例です。派手な特徴を持った人物は少なく、日々の生活に生まれる微妙な感情の揺れが描写された作品が多いです。
これと逆にエンタメ作品は、特徴を誇張したり、極端にしたりした登場人物が多いですよね。その方が読者が反応しやすいからです。
人物から物語を広げる
特徴のある人物を作れたら、そこから物語を広げていくことができます。
どういうことか、実際にお見せしていきます。主人公はストーカー癖がある20代男性です。この登場人物から物語を広げていきます。
物語を広げるコツは、「登場人物の過去と未来を考える」ことです。
過去はどんな人間だったのか?未来はどんなことをやっていくのか?そう考えていきます。
まずは過去からです。ストーカー癖がある人物の過去を考えると、とりあえずは「なぜストーカーになったのか?」が気になりますよね。
その理由を3つ書いてみます。
・振られた元カノへの未練
・推しのアイドルが好きすぎる
・たまたま見かけたから
この中だと、1つ目か2つ目のが深掘りしていきやすそうです。3つ目も突拍子がなくて個人的には好きですが。
それでは、2つ目の「推しのアイドルが好きすぎる」を掘ってみましょう。どんどん進められるように、矢印でチャート化してみます。
・なぜこのアイドルをストーカーするのか?
↓
・そのアイドルがすごく好きだから
↓
・好きになったきっかけは、友人に連れて行かれたライブ。好きなものがなくて落ち込んでいた主人公だったが、そのライブで見たアイドルに心を奪われ、生きるエネルギーになった
↓
・犯罪行為であるにも関わらず、ストーカーを続ける主人公は、執着質な性格だといえる。そういう人間は例えば食事のときなんかも、同じものを執着して食べ続けるのではないだろうか?
こんな感じでガンガン広げていきます。
お気づきの方もいるかもですが、じつは過去を掘る作業は、その人物の人物像を作っていく作業にもなります。一般的な小説の書き方では、人物像を決める→話を書くという順序のものが多いですが、必ずしもその順序でやる必要はないんですね。
そしたら、次は未来について考えます。未来を考える作業は、すなわちストーリーの展開を考える作業です。それでは、ストーカー行為におよぶ人物に、どんな未来が待ってるでしょうか?
・通報されて、警察のお世話になる
まあ、そうなりますよね。でも、これだとすぐに話が終わりそうです。他に展開はないのでしょうか?
・ストーカー行為がエスカレートして、家に侵入してしまう
・アイドルを教えてくれた友人にストーカーがバレて絶交される
・別のストーカーと出くわす
3つ目が個人的に好きです。別のストーカーがアイドルを襲おうとしたとき、アイドルをストーカーから助けて、恩人扱いされる。でも、じつは自分もストーカーだったから、複雑な心境で…とかにすると、もっと書いていけそうです。
一回ですんなり書くのは諦める
上記の方法でやっていくと、膨大なネタを思いつくことになると思います。人によっては、一日でまとめられず、嬉しい悲鳴みたいな状態になるかもしれません。
そういうときは、企画やネタ出しと執筆の段階を分けましょう。自分が書きたいボリュームの作品にいくつネタが必要かを数えて、その数になるまでは、企画とネタ出しに集中します。
作家の先生方も、企画やネタ出しは、制作と別にする先生が多いそうです。困ったら分けてみるという考え方は、けっこう使えるやり方なので、覚えておくと便利です。
ネタが尽きたら
こんな感じで書いていくと、驚くほどたくさんネタが出てくると思います。でも、あるところで展開が思いつかなくなったり、ネタが尽きたりすると思います。
でも、慌てないで下さい。ネタはいつか絶対に尽きます。それは、大御所の作家でも同じことです。
でも、大御所の作家が尽きずに作品を出しているのは、ネタが尽きてもリカバリーする方法をマスターしているからです。これについては、また別の記事で解説していきます。
今日はここまで。読んでいただいてありがとうございました。
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