エンタメ小説で読者を飽きさせないキャラはこうやって作る

・この記事について


エンタメ小説を書いてみたい!でも書き方がわからない!という方向けの記事です。

題材として使うのは、伊坂幸太郎『動物園のエンジン』です。短編集『フィッシュストーリー』に所蔵されています。同じく所蔵されている『ポテチ』は映画にもなりました。文庫50ページ程の作品で読みやすく、これからエンタメ小説を書いていきたい人には、格好の教材です。

※作品のネタバレを含むので、未読の方は注意して下さい。

・登場人物の人数について


主な登場人物は4人です。私、大学の先輩の河原崎、同級で動物園職員の恩田、動物園で毎日うつ伏せで寝ている元動物園職員の永沢です。

この他に、変死した元市長の小川、私たちの旧友の伊藤、高層マンションの子供も登場します。しかし、会話に出てくる程度なので、メインはやはり4人です。

これくらいの登場人数が、50ページくらいの小説にはちょうどいい、ということでしょう。

・登場人物の役割


伊坂作品の骨組みはミステリーなので、基本的なことは「いかに読者をアッと言わせるか」を考えて作られてると思います。

伊坂自身もインタビューなどで、「プロットが先で人物は後」とはっきり言っています。つまり、伊坂作品の登場人物は、トリックを成立させるための役割を持つ駒だと言えます。

伊坂幸太郎みたいな作品が書きたいなら、「この登場人物が担当する役割は何か?」を考えるのが大切です。

というか、つねに事件は人によって起こされるわけです。「ミステリは登場人物が9割」とまで言って差し支えないでしょう。

登場人物が担当する役割について、『動物園のエンジン』はどんな工夫がされてるでしょうか?

この作品は、私と河原崎がメインのコンビとして、話が進みます。私と河原崎の2人を推理コンビにしたことで、何が生まれているか?

それは読者が飽きるのを防ぐことです。そして、エンタメ作品でいちばん大切なのも、このポイントです。

昨今、ミステリ作品は、湯水のようにたくさんあります。そのせいで読者はミステリに飽きている。飽きたあまり、ミステリなんて馬鹿馬鹿しい!と思っている読者もたくさんいるわけです。

河原崎の推理に対してシニカルな「私」がいるおかげで、読者は「私」に感情移入することができます。「やれやれ…」と思いながら河原崎に付き合う「私」と一緒に、読者も河原崎に付き合う形で読み進めることができます。

読者は主人公に自分を投影する。だから、主人公は読者が共感できる人物にする。物語の鉄則にたいして、忠実に作られているわけですね。

「でも、動物園職員の恩田はいなくて良くね?」と私は思いました。しかし、これは間違いです。

なぜなら、恩田がいることで、キーパーソンの永沢が元動物園職員であることや、今は退職して離婚もしていることがわかります。この小説は、永沢という人物の謎を解くのが目的なので、恩田は重要人物なんですね。

・創作に活かすには


実際に小説を書く際は、これをどう活かせばいいでしょう?カンタンです。

・メインの登場人物は2人!(私と河原崎)
・キーパーソンは1人!(永沢)
・便利な人物は1人!(恩田)


とりあえず、これだけ覚えて下さい。これで、バランスの良い文庫50ページくらいの中編が書けます。

このときメインの人物には、読んでほしい読者層の気持ちに近い人物を入れておくとベストですね。

今日はこれで終わりです。いいねして頂けたら、また同じような記事を書きます。

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