随筆(2020/1/5):『プロジェクト管理を一人でやっていく「以前」にやること』1_1-1_3(経験や知見の型としての「苗代」他)

1.一人きりのプロトタイプ開発

1_1.経験や知見の型としての「苗代」

さて、前回までの連載随筆、『自罰の呪いで成長する人と、その破滅』シリーズでは、最後に
「そしてそれ(精神的余裕によって手に入った全てのもの)に水をやり、大事に苗代として育てて、いつか稲穂の広がる金色の野に降り立とう。
そうするには、どうするか。
それは、また別の記事にします。」
で〆たのでした。

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さて、苗代という話をします。
もちろん本義は農業の話なのですが、この記事の中では、「自分の中で、今までの経験や知見を体系化して、ちょっとした型のようにしたもの」のことです。

これがないと、新しい知見が入って来た時に、まるでとっかかりがないので、何も訳が分からないままになるし、最終的に何も得られないままになります。
あると、とっかかりがあるので、そこから新しい知見から既存の知見への翻訳ができます。「これは多分こういうことなんだな」程度には。
そこからどんどん新しい知見は消化しやすくなり、知見はつながり、苗代は大きくなります。

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そのうち、慣れて来ると、いろんな知見から得られた「型」そのものが、ウスボンヤリーと見えてきます。
「個々の知見がパターンになる」ということと、「そのパターンが見えて特殊な知見として再現性のあるように扱える」ということとの間には、頭一つ分の差があります。
「型」が分かって、次に来たものがそれに合っていると判断して、効率よく超高速で吸収していくと、苗代はさらに一段と大きくなります。

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これが、いつの日か、「自分」そのものの「型」になるのだ、と思って下さい。
丁寧に育てた「苗代」は、「世界」と上手く噛み合った「自分」をもたらします。それは非常に強力な世界内存在です。

もちろん、世界との齟齬は常にありますが、「何も分かっていないまま齟齬に苦しむ」のと、「抗うべきものが何なのか分かっていて抗う」のとでは、勝率がまるで違ってきます。
そして、もちろん、何も分かっていないまま齟齬に苦しむことはたくさんあるし、それが基本形だ。ということは忘れないで下さい。
だが、こればっかりだと本当に消耗が激しいので、ものすごく疲労や苦痛がありますね。
分かっていた方がいいこと、分かっててしかるべきことは、出来るだけ分かっていたほうが、頭や手の疲労は大幅に少なくなります。
疲れるの、基本的に、損でしかないですからね。ゆくゆくはそういうのは極力減らしていきましょう。

1_2.要するにただの潔癖症としての「ぶっつけ本番主義」

「は? ぶっつけ本番しかありえねーんだよ。苗代なんざ、養われてきたやつ特有の甘ったれた概念だ。かったるいこと言ってんじゃねー」
という意見はもちろんあるし、確かにいきなり実践をやらねばならないことも多々あります。
それもまあ分かるのですが、出来ればそうならないようにしましょう。

「体で覚えられるのはスキルであって、センスではない。センスなんて言ってる、美大のスカした甘ったれ共、現場に来るんじゃねー」と思っている、ぶっつけ本番主義者、かなりいます。
そうじゃねー。目利きもスキルじゃー。「状況をよく見て、そこから何か型が見えてくる」ことは、ちゃんとやってたらふつうは手だけじゃなくて目にも利いてくるんじゃー。
そもそも「状況をよく見て、そこから何か型が見えてくる」ことを軽んじているやつなんか、ぶっつけ本番主義者でも美大生でも、あるレベルから伸びねーの当たり前なんじゃー。

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もう少し俗っぽい話をします。
生き残るためには、どんなに生き汚かろうが、生きていくしかありません。
その生き汚さの中には、育ててもらえるならニンマリと受け取る、ということも含まれています。
もらえるうちは、断固として甘ったれましょう。

「甘ったれは生きていくな」というの、それ自体が「カッコイイ奴以外全員死ね」的な潔癖症を許されてきた人特有の価値観でしょう。
その価値観、どこかのベッドタウンなら通用するかもしれませんが、天下の往来ではふつうにポリバケツに突っ込まれて一蹴される類いのものなので。
そこに野良猫がいませんか。彼ら、人からもらった食い物を食ってるのではないでしょうか。何で好き好んで、野良猫よりも飢えようとするのですか?

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(ちなみに、たとえ話ではなくリアルなことを言うと、本当は野良猫に餌付けするとしたら、役所に確認すべき要件があるはずです。
そういうのでなく、もし単に餌付けしたいのなら、ちゃんと責任をもって飼って欲しいのです。
「飼えないのに餌付けして、後で管理しきれなくなって、しかるべき役所に苦情を入れる」ということは、あらかじめ避けて欲しいのです。
この手の電話がある度に(あります)、役所はそうしたクライアントの市民の方を、退屈しのぎに面白半分に友達を爆殺してから嘆いてみせる怪男児・イボグリくんと区別できなくなっていきます。
それでも公僕なので市民には逆らえませんが、たとえ公僕が何を思おうと、一連の成り行きがイボグリくんムーブであること自体は何ら変わりはありません。
場合によっては、市民に選出された代表者による民選立法議会が制定した、市民をも拘束する法律や条例に抵触し、何らかの不利益があり得ます。これはマジです)

漫画_イボグリくん_201605190050395dc

1_3.船頭一人で船を山に登らせていたら力尽きて潰れてしまったエクストリーム座礁墳墓群

型があることによって、「何をすれば状況や道理に鑑みて効率がよいか」「何が出来ていないから埋め合わせるか」という指針が立ちます。

そういう方向が決まらないうちに、「翻訳」の量をこなすと、酷い目に遭います。
状況や道理に合わない努力をしたら、得られるものなく、ただ消耗して、死ぬんですよ。
直接的には役に立たないスキルツリーが、ものすごく伸びたとしても、潰れたら全部無意味になってしまいます。
それは、やはり、困る。
やるべき個々の方向性が見えているかどうかというの、とても大事。

(続きは、また明日)

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