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随筆(2020/5/18):長期間、リソースを不可逆的に損なって、やっと得られた幸せから、みすぼらしい砂の味がする時

リソースを、対価として不可逆的に損なって、ようやく得られた幸せが、損なったものに比べて、「見合わない」、と思ってしまったら、どうするか。

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色恋沙汰ではたくさんあるでしょう。
「結ばれたが、払った犠牲が大きすぎる、それにしては得られた幸せがみすぼらしすぎる、こんなはずじゃなかった」
という。

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ここでしばしば男性は、パートナーを愛する本来の気持ちと、

あんだけこちらのリソースを吸っておいて、たかだかこれっぽっちの幸せしか得られない、とは?

俺が捧げようが、報われるという話は、パートナーシップでは成り立たない? そうですか。
つまり、パートナーシップでは、捧げさせて報いずに搾取することが、許容されている、とでも?

あるいは、俺の捧げたリソースや財やサービスには、その程度の価値しかない、と思われている?
それらが俺が、地獄のような職場で、刑罰のような労働で、血と汗と涙で贖ったものだ。
それを、とにかく、大して報いる価値のない、端金であるがごとく扱いやがった。そうかよ。実に盗人猛々しい。

俺の中に残っていた、瑞々しい柔らかな心は、相手に真水を捧げている間に、パッサパサに渇いて、だいぶ前に死んだのだ。
人を愛する情熱や、愛されている喜びを感じられる感受性は、瑞々しさも柔らかさも失った時に、やはり不可逆的に喪われたのだ。
絶対に、喪われた自分の精神機能の仇を、インナーチャイルドの仇を討っていこうな。

そのためにも、相手には、絶対にリソース的にもキッチリ賠償させて、地位的にもキッチリ制裁を与えてやりてえ。
相手を菜種のように搾り尽くして、相手が盗んだリソースを、ノシつけて力ずくで吐き出させてえ。破砕して、捨てて、その後の人生、しばらくの間、苦しみ抜いて欲しいんですよ。
相手は、盗みをして悪びれないのだ。もはやパートナーどころか、同じ人間に見えなくなってきた。
そんな相手に、盗みということが、いかに相手を苦しめ怒らせる、邪悪な振る舞いであるか、脳髄に叩き込んで思い知らせてやりてえよなあ

という気持ちの板挟みになります。
男性がパートナーに対して攻撃的になるパターンの、よくある類型、しかもかなり厄介なやつです。

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「はー? ケチケチしているやつに、評価や地位なんかある訳ないやろ。みすぼらしいんだよ。この貧乏人が」
とは言いたくもなるでしょうが、個人的にもやはり、一度や二度、実際に過労死しかかると、
「ケチだの何だの言って悪者扱いして、罪悪感を盾にリソースを吐き出させようとする人には、職場の給与担当者や自宅の家計担当者や借金取立業者や臓器売買業者と、同等か倍くらいの深刻な恨みを抱く」

んですよね。

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他人にプレゼントしたら、本人が餓死するようなの、何一つまともじゃないからね。そんなことは持続不可能だ。
そもそも、持続不可能ならば、そういうプレゼントで回る社交は、するべきではない。
もらって、後で返す。これしか出来なくなる。そういうのを許してくれる相手としか、社交は出来ない。
と考えるべきだ。
もちろん、ちゃんと、後で返さなければならないんですよ。それも含めての話です。

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女性は私も詳しくは知りませんが、おそらく同じ話は多々あることでしょう。

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だから、自分か他人が、長く苦しい時期を越えて、恋が成就した後は、かなり気を付けた方がいいですよ。
相手はメチャクチャ消耗しているんだから、消耗させられた恨みがおそらくある。

それは、絶対に、成仏させていかねばならない。

あるいは、相手が消耗しきっていて、どのように報いても、ちっとも嬉しそうではない、沈んだ表情のままのことがある。
これは、ひょっとしたら、うつ病の兆候かも知れない。だとしたら、少しでも早い治療が肝要だ。テキパキと精神科に連れて行くんだ。
平たく言うと、あなたはパートナーをうつ病にしてはいないだろうか。その可能性が、実は排除出来ない訳だ。

自分は医療機関の人間じゃないから、医療に責任は持てない。相手を治療出来ないし、そういう立場にない。という話はよく言われる。
だが、じゃあ、せめて、相手のうつ病が良くなるよう、医療を支援し、そして妨害しないようにはしなければならないんだ。パートナーの生存なり生活なりが大事ならば。
これはシリアスな話だ。そんなまさか、と軽々しく一笑に付すんじゃあない。本当に気を付けるべきポイントなんですよ。これは。

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だもんで、時間の経過ということを、あまり軽視しない方がいいですよ。
過ぎていく時間は、自分の心理的抵抗を減らしてくれるかも知れないが、相手の意欲を減らしもする。
より短時間で自分の心理的抵抗を減らすために、相手が意欲的に奉仕してくれる場合。実は相手の意欲は、たった今、超高速でガリガリと摩耗しつつある。
と見るべきだ。
もちろん、自分の方が無理に心理的抵抗を減らそうとしても、到底そんな気にはなれまい。心理的抵抗は、ある。むしろ、そんなことをしたら、増える。
これはもうやむを得ない。時間は、どうあったって、かかる。

である以上、せめて、時間が癒してくれる深い傷の話と同じくらい、時間が膿ませて深くなった傷のことを、治るようにせねばならない。
ちゃんと、同じか、それ以上の時間をかけて。

そしてそれは、本人はもちろんだが、パートナーも尽力するのだ。
精神科に連れていくとか、セカンドオピニオン外来に連れていくとか、治療方針にごちゃごちゃくちばしを突っ込まないとか。

パートナーシップは、なってからが長丁場だ。
それは、それまでの関係を築く努力で喪われたリソースの赤字を、そのまま引き継ぐ。なかったことには出来ない。チャラにはならない。
ちゃんと、そこは、適正に手当てしていきましょう。

いじょうです。

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