「みをつくし料理帖」を読んで思ったこと〜小松原、源斉、澪、美緒の恋模様について

重大なネタバレを含んでいるので(隠す気もない)気になる人は読まないように!!

今年一年かけて「みをつくし料理帖」というシリーズを遅ればせながら追いかけさせていただいて、私とても悲しいことが三度起きたんですよ。
誰かが死んだとかそういうのではない個人的な悲しさというか。

まず一度目。
源斉先生への美緒の片恋が実らなかったこと。
この時点で美緒は小松原への恋慕の情を隠していたので、また成就する見込みもなかったので、美緒と澪は友人になれたのでしたな。
この段階で少女漫画や小説を読み慣れた人間なら気付くよね。
「源斉は澪のことが好きだよな」って。
でも、源斉は澪へあからさまな恋慕を示さなかったし、それは物語の展開上としても必要だったわけですよ、小松原と澪の婚礼の話が決まるまでは。

そう、私は源斉先生は、ずっと不憫キャラでいくと思ってたんです。
澪を優しく見守り、自分の分を弁え、決して押し付けることなくその志を尊重する…素敵な「当て馬キャラ」だと思ってたわけです。

二度目の悲しみが、美緒はきちんと番頭を婿にもらい、着実に幸せだと「言い聞かせて」暮らしていること。
いや確かに幸せではあるんですけど、恋を諦めた女としてやっぱり「空いた人には諦めて欲しくない」ってのがあるんでしょうね、澪は美緒に一切合切を打ち明けなくてはならなくなる。
それは友情としては美しいかもしれないけれど、ちょっと同情を引きすぎというか、「源斉の望みはそうかもしれんけど澪は小松原と添うんだから」と思ってしまう強引さで、ちょっとだけ羨ましさも覚えた。
好きな人には思いを遂げてほしいわなあ。

そう、だからこそ源斉は完全なる片恋の道しか残されなかった。

三度目の悲しみが、小松原と澪の縁談が壊れたこと。
正確にいうと、「澪は小松原と別れたくはないけれど、添い遂げるためには料理人の道を捨てなければならない」という葛藤が悲しく、そして「料理人として生きる」と決めたその切なさですよ。
小松原は澪に「何も案ずることなくその道をいけ」と言い、自分はいい縁談を見つけてさっさと結婚してしまう。
これを美緒は「澪さんをいずれ迎えるための準備」だと勝手に解釈してたんですけど、結婚したからには武家の男ですもの縁切りはないわけですね。

で、これを悲しみといっていいのかちょっとあれなんですけど。
源斉と澪が夫婦になる誓いを立てるシーンで、「小松原は!!?」ってなっちゃったんですよね〜…。
いや6年にもわたる片恋を成就させた源斉、それを薄々気づきながらも人をもう自分の下手な恋で傷つけたくないと思う澪。
いいカップルだとは思います。
ストーリーから小松原を排除することが決まったら、そりゃ相手は源斉しかおらん。
それがね…なんかさっぱりしすぎてて辛かったんですよ。

澪はさ、別に心の中で二股を続けていたわけではない。
それはわかってる。
あまりにも自然に源斉が寄り添いすぎたために、また美緒の思いびとだったという過去があるために、次の恋になかなか踏み出せなかったり理由もわかる。
でもさ、小松原さまのお元気そうな姿をみて、それだけで気持ちに決着ってつくもんなの???
その辺がわからん。本当にわからん。

源斉先生が報われた横で、報われなかった恋にもやっぱり思いをはせてしまうのが読者だと思うんですよ。
だからこそ「源斉と澪が夫婦の約束をする」ってのがちょっと取ってつけみたいで、受け入れ難かったというか。

めちゃくちゃ面白い話だったが故に、そして最後まで小松原の影を匂わせたが故に、もうちょいなんとかならんかったかとは思う。
これが四方八方丸く収まるエンドだというのもわかるけれど、ちょっと悲しかったのです。

でも澪ひとりで野江を養うのは不可能だし、やっぱりそれは源斉という、今まで傘となり火鉢となり寄り添った医者がいてこそなんだろうなあ…時に澪を導き、叱咤し、励まし続けたあの人がいてこそなんだろうな…。

だから不服と言わなくてももやっとしてしまったことは本当申し訳ないことなんだけれど、それでも全員が幸せになれる道はなかったのかなって思ってしまう。
芳さんが幸せになったように。
まあでも芳さんも天満一兆庵諦めてだからやっぱこれ以上の最後はないのか…。うう…。

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