赤い斑点

赤い斑点が沢山できた体に鞭を打ち、私は鎮痛剤を飲む。そうでもしないとこの体はすぐにボロボロになってしまう。何かを支えに生きたい私と私たちは、食事でも睡眠でもなく鎮痛剤を選んだ。

木造二階建てのあの家は、雨の日建っているだろうか、真っ直ぐ。三人で暮らしているだろうか、楽しく。投身自殺を繰り返す彼の友人とその彼女、そしてガリガリの彼。と、私。鍵だけ渡されて、隙間の町から排除された私は、ひとり池袋の端っこの、壁の薄いアパートで何かを待つ暮らしになってしまった。誰のせいだろう。本でも読めよ。

赤い斑点は日々増殖していく。腹周りだけだったのが、乳房にできて、首筋にできて、足の甲にできて、膝裏にできた。鎮痛剤はよく効くけど、心臓は心と深く結びついているから拒んでいる。

私には君しかいないの、という私は、未完成のフィルムを永遠に回している。隙間の街の小さな映画館はつぶれたから、きっと、あのボーリング場でまわしている。水色の電車が走って、じじいとばばあばかりのあの街、回転寿司屋が意外と美味しくて、よく二人で行ったよね。ねえ、私の身体は斑点だらけだ。でも、心はとても健やかだ。嘘だと思うかい。

泣いてもいい、の言葉は、鎮痛剤たちが粉々にして身体のあちこちに封印してしまった。同じように、ひとりにしないで、の言葉もどこかへしまわれた。心臓以外の身体のどこかに。

排除された木造二階建てのあの家を思い出すと、私はそれなりに貢献していた。投身自殺を図った君の親友とも仲良くしていたし、その彼女とふたり飲みに行ったりもした。あれは私なりの努力で、実を言うとそのころから服用していた。まだ赤い斑点はできていなかった。もしかしたら、君は私のご飯に鎮痛剤を混ぜていたのかい。

聞いて欲しいんだけど、最近やくざにだまされた。薄黄色の汚い建物の中で、化粧のきつい女性と後頭部が薄い男性二人が私の前に立ちはだかって、無知の弱さを吐くまで食わされた。あの二人は情けというものを知らなかった。拳銃にルールを沢山つめて足の小指から一本ずつ撃たれた。

やくざだらけのこの街で、私は君を信じていたのに、あのときもそれから昨日も明後日も、止めどない時間の洪水の中で呼びかけていたのは、いったい誰だったのだろう。ここから居なくなる予感だけで、赤い斑点は増えていくなんて、いったい誰が信じるのだろう。

#詩


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