シオンinucrab

初詩集『これがわたしのふつうです』Amazonなどで発売中 / 現代詩手帳・詩と思想掲載 / 中原中也賞など /Kindleでミニ詩集『ep.』発売中 http://t.co/vj1cEIlYEg /

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マガジン

  • 私がいっぱいいるもんだから

    詩たち

  • わたし2.5(あなたにむけて)

    自分を解体するエッセイじゃないけどそのような何か。 心のびょうき/詩人のこと/カウンセリング 誰かの何かになればいいね。

  • 私と鉄塔の町編

    21歳くらいに書いていた何か

最近の記事

ナンセンス

向こうの海岸で火の手があがっている。わたしは目が悪いのでよく見えない。季節外れのどんど焼きだろうか。 横須賀の空と海は変わらず青い。沖には潜水艦と空母が停泊していて、カモメが飛んでいる。近くのショッピングモールからケンタッキーのにおいがする。 母がテレビを見て体調を崩した。朝食のパンを俯きながら食べて、目は落ち窪んでいた。眼鏡をかけている分、わたしより色々なものがよく見える。横浜へ出かけようとしていたが取り止めた、と言っていた。 腹の中の子はぐるぐるよく動き、ニュースや

    • よるは、いっしょに

      夜の淵が 手を取り合って 襲ってくる 波のように 白いしぶきをたて 防波堤もない わたしの夜 おぼれて 打ち上げられる海岸線 暗闇の向こう側 呼応して光る貝の傍 あなたがいて わたしがいる 手を取り合い 寄せては返す 夜の淵が まだ消えない まだ消えないで と いっぴきの小さな魚になり 月明かりを身体に照らして いつの日か乗りこなそう 夜の波を たくさんの魚たちの中 一緒に

      • りんじん

        液晶越しの 若者たちの往来が 両手ですくったように からりと消えた 誰もいない交差点の 赤信号が 希望のふりをしている 美しいと願い あるいは信じ 哀しみは今 そちらに置いておかないか じゃらじゃら流れるパチンコ台を 握りしめる手に 刻まれた人生の皺 さらにその奥 美しい人がいるはずだ 忘れてしまっただけだろう 近所から聞こえる声の さらにその先に あなたがいるかもしれない 手を振ってみよう 思い出せるだろう

        • いのり

          グッバイ世界から 見えていた風景 公園の遊具たち あふれていた足音 笑い声 コンクリートに映える 空っぽの学校 海辺の町へ飛んでいけ 作られた日常で 仕分けられた口笛 懐かしいなまり色 託された日常を アップデイトして 運べるだろう 誰とも話さずに 目を合わせて 手を合わせて 作られた日常で あなたは動く

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        • 私がいっぱいいるもんだから
          91本
        • わたし2.5(あなたにむけて)
          6本
        • 私と鉄塔の町編
          12本

        記事

          不安の種

          マスクで覆われた顔が ぞろぞろと ひとつのスーパーへ行進する こころだまりに 不安の種が浮いている 外出の自粛をお願いします しかし生活必需品などの買い物は大丈夫です 皆さん落ち着いてください テレビの向こうで呼びかける声が マスクに吸い取られ届かない ぞろぞろと 自分の身だけを案じて行進をする 東京 やむを得ない冷凍食品 やむを得ないカップヌードル 重要で不可欠で必須であるため わたしたちは買い漁る 不安の種は育ってしまった 立派な枝葉を春風に揺らしている

          にちじょう

          ごにゅうがくおめでとうございます 校門に貼られた言葉だけが浮いて 東京は青空の下 やっぱり二〇二〇はこなかった わたしの思った通りだ それでも胸に流れる 血の色はなぜだろう あたたかい 桜が咲いたら スタートの合図で走り出す 四月 手を伸ばせばある 幻想 変わらない太陽の色に 変わらないアパートの日焼け 変わらない家賃と 変わらない時間を 貪らないでほしい 欲しがりません勝つまでは 日常という言葉はなくなりました 欲しがりません勝つまでは 網目からそっとすくいだ

          わすれもの

          揺れる 踊る 赤い線 遠のく 白い光 遠くへ行って 遠くへ帰ってきた ここがどこでも もう関係ない 必要なものは こんなにたくさん いらない #詩

          わすれもの

          空へ

          老犬の丸いしっぽ 遠い線の先 吠えていた声は きちんと 残っているかな 南へ向かう 線路の先 白内障の瞳に なにがうつって いるのかな きっとまだいる 暑い夏を乗り越えて またそこにいる 皮膚のできもの おむつの片付け 犬臭いフローリング もうすぐで秋だったよ 体温の高い けむくじゃら 痴呆症のくせに 散歩は一人前 よく歩いた 海岸沿いに 白は映えた 瞳は白くなって 海まで 行けなくなった よく食べて 電波に乗って そらへ届けば わたしの大好きな あの人がいるよ

          カウンセリング行くことは変じゃないよ

          わたしは二十代前半からメンタルクリニックに通っております。ネット上だと顔も見えないし(ネットリテラシーがないので一方的に顔晒してるけど)「行ってるよ!」と気軽に言えるんだけど、現実社会において、やっぱり、言えないのよね。これが。 ツイッターはリアル友人も結構見ているようなので(直接言われたことはあんまりないけど)リアル友人に知られることは、まぁいいやって感じなんだけど、友人と社会は、あまりにも違う。よね。 鬱は甘え!というのは未だによく聞くし、心を病んだ人たちも「やっぱり

          カウンセリング行くことは変じゃないよ

          働けない人間の社会との接し方

          以前書いた記事(新・解体するために)で『働くことで社会に還元する』云々を書きました。それについて最近はよく考えている。 社会に出てふつうに働くことが出来なさそうな私は一体全体どう還元していけるだろうか?頑張ってまた『おーえる』をやるのか?いやでも、たぶんできない。また同じことを繰り返す、そしたらどうすればいいのだろうか。とかとか。 有難いことに、わたしはなんだか詩が書けた。よい!と言ってくれる人もいた。ご縁があって詩集も出して、世の中に出回った。同じような人に届いて、な

          働けない人間の社会との接し方

          水平線

          小さな体でテキーラを叫んでいたあの頃は夢だったのかと問われる。ニューエイジを気取ってトーキョーを闊歩していたあの頃は夢だったのかと問われる。 父も母も友人も忘れてビールを吐くまで飲んでいたら、歯が全部抜け落ちた。歯医者ではもう手の施しようがないらしい。食事をしなくてよくなるから、それならそれで、よっぽど楽だなあ。奢られるままにテキーラやカクテルを飲んでいたら乳房も溶けて跡形もなくなった。空いていたはずの穴も塞がった。これでセックスをしなくて済むからよっぽど楽だなあ。 枯れ

          新・解体する為に(病気でもいいじゃん)

          詩集を出して一年が経つ。それと同時に、会社を辞めてから一年経過。 『療養』の必要があったので、会社を辞めて、社会から離れ、身近な人たちの支えのおかげで一年間を生きた。社会から離れた一年、何をしていたかというと、よく言えばのんびり、悪く言えばなーんにもしていない。のです。やらなきゃ、とか、やりたい、とか、そういう気持ちはたくさんあったんだけど。ね。 各所で言ってますが、辞めてからまず本が読めなくなった。好きな小説家の本も、詩人の本も、だんだん読めなくなっていって、最後は本を

          新・解体する為に(病気でもいいじゃん)

          心の病気と詩人と賞についてのちょっとした話

          ※ずっと下書きになっていたものを今公開してみることで、何かがあるかもしれない※ 10月3日月曜日 ツイッターにて、詩と思想新人賞内定者には電話が来ると書かれており、電話がないのでわたしは落ちたのだ、仕方ない仕方ない、そう思いながらよくわからない気持ちになり、どうしてもアルコールを、ビールを摂取したくなる。 池袋にあるよく行く馴染みのバーに行き、久しぶりにマスターの顔を見ながらアルコールを摂取する。何度かあったことのある常連さんと、マスターと、三人で酒を飲む。 いつも飲んでい

          心の病気と詩人と賞についてのちょっとした話

          ファイブ・オー・オー

          ファイブオーオーのビールを飲んで、 夜の散歩、 池袋のラブホが光る。 バーで繰り広げられるラブホの話し。 片手にみんな持つアルコールと笑い声、 それほんとうなの、 って聞けないから ファイブオーオーのビールで カンパイを繰り広げる 平日夜の二十一時。 あのラブホがすごくて、 女の子同士の気持ちいいし カワイイし女のコってほんとう kawaiiし息してくれてありがとう って支離滅裂なのを全部 何かのせいにして アルコール摂取する精神。 女しかいない空間で、 きみは誰とでも話

          ファイブ・オー・オー

          像とY字路/書評

          像とY字路  小川三郎  現代を生きる私達にとって、とてつもなく希薄な『今』という時間。当たり前の日常と当たり前の生活の中で薄まっていく時間という感覚、今生きているという感覚。しかし『今』を生きていかなければいけないという矛盾に、詩人は悩んでいる。漂白されていく現代人としての時間を、当たり前のこととして受け取り目を瞑れば簡単だが、詩を書くものとしてそれはできないのだ。  小川三郎が二〇一二年に発表した『像とY字路』は、「生活」と「日常」の中で淡々と『今』を見つめるまなざし

          像とY字路/書評

          透明海岸から鳥の島まで/書評

          透明海岸から鳥の島まで  秋亜綺羅 細長の白い表紙をめくると、一編一編の詩の物語たちが凄まじい熱量と共に私の頭の中になだれ込んで来た。最後まで読み終わるってもよくわからず、しかし表紙を手繰っていた。私はいつの間にか真っ白な紙の上に立って、沢山の物語を眺めていた。そこに難しい言葉はひとつもなく、言葉と言葉とを優しく(時には力強く)結び付けていく作者の暖かな手と、それによって生み出される物語があるだけで、いつのまにかどっぷりとはまり込んでいた。 この詩集の魅力はいくつもあるが

          透明海岸から鳥の島まで/書評