見出し画像

伯母

二十五年のわたしの命を愛してくれてありがとう。あなたの六十六年をひと粒ひと粒、くれていたんだね。あなたには大きな実が沢山なっていた。ひとくちかじるくらいしか、わたしには出来なかった。

あなたの心臓に、わたしの二十五年をささげたあのゼロ時から朝の四時まで、佐世保に帰る約束をしていたあの四人で過ごしたかったのかな。むくんだ足も、右手の指一本一本に、血がかよい、あたたかかった。ほんの三十分、あなたのベッドで一緒に寝たんだ。狭い部屋の十月のつめたさがかおる箱の中、唯一あなただけがあたたかかった。

二十五年の命を愛してくれてありがとう。あなたの落とした赤い実を、これからひろう人生です。佐世保の海は横須賀の海とはちがうのですか、それを一緒に知りたかった。あなたの中にわたしはいたのに、わたしは一口かじって終わってしまった。沢山の願いを残して旅立った六十六年に、わたしの二十五年はたったの四時間だった。

あなたに実った大きな赤い実を、皆で囲んで食べたかった。それすらできずに気付かずに、思い出がつもっていく夜です。二十五年を愛してくれてありがとう。

#詩

もうちょっと頑張れよ、とか しょうがねえ応援してやる、とか どれもこれも励みになります、がんばるぞー。