ひび
何故こんな金にもならないことを黙々とやっているのか、と金髪少女に尋ねられたので、青い手ぬぐいで彼女の濡れた髪の毛をぬぐってやり、そこからあわ立つ夢と希望を食べているんだと強気に答えたけど、結局魚の小骨溢れる台所を見られてしまって情けない思いをした、という大晦日の思い出を、(そうだったっけ)、十一月のなんでもない夜にふと思い出したりするわけです。
祖父の飲み干したビールの瓶が食卓に並んでいた夜は、無性にカボチャの入ったシチューが食べたくなって、どうでもいい夜に幻想が詰まったその、(シケモク)、そうシケモクに、一本混じった金色の髪の毛をつまんで、形の悪い奥歯で咀嚼してみるけど、マッチ売りの少女みたいなことには全くならないものなのですね、困った。
最近よく見る夢はロウソクでゆらゆら揺れる母校の図書館にいて、どの本を借りるにも少女の真っ赤な血が必要だというから、私もう二十四歳だし、少女を図書館中くまなく探してみるけど何処にもいなくて、トイレでこっそり自分の目ん玉にガラス片を突き刺してみると、出てくるのは精子のようなカスタードクリームのような、得体の知れないどろっとした液体、結局、何も借りられずに夢は終わるわけです。(馬鹿みたいね)
冬の夜っていうのは遠い故郷を思い出してしまうのが相場で、例に漏れず私もそうで、冷蔵庫には沢山の海岸通りと焦げた毎日がタッパに入ったまま、金にもならない会社にお弁当として持っていって、あら橋本さんは毎日お弁当を作って立派ねなんていわれて、(でも嬉しそう)、脳みそをドロドロに溶かしてラーメンとか煮物とか作るくせに褒めるフリはしないでほしいです、と、たまに言ってやりたくなるわけです。
寒い夜を真っ直ぐ裂いている時に考えることといえば、何故家とかアパートの屋根にちょうつがついていないのかということで、(へえ)、だってそうすればそれぞれを開いて上から覗いてみたりできるし、と家に帰って股間をかきむしりながらぼやぼや考えてしまって、ひとつひとつの知らない生活を私が全部たいらげて毎晩糞にでもしてやれば、日々をみんなで暮らせるんじゃないかと思うわけです。
むなしい私達の求める共存は明日にあるとか、むなしい私達が共存するための明日であるとか、そのように綺麗な明日が存在するならば、生活を無理にでもたいらげてはパンツを降ろして、真っ赤な顔で糞をしてやりたいと思うのです。(告白)
もうちょっと頑張れよ、とか しょうがねえ応援してやる、とか どれもこれも励みになります、がんばるぞー。