それら全て
大きな道路沿いにはしたり顔のマンション郡が、お互いを拒絶しながらへらへらと建っている。さざなみみたいな心臓の鼓動が静かに地面を揺らし、たまに大きなくしゃみをしている。
とっぷり暮れた東京の街並みが、何の変哲も威力もない細かな虫の羽に映りこみ、あの子達の意味ないお喋りが明日を形成していく。おかしな倫理観と薄っぺらい紙のかけらで、私達は意思疎通をしている。あの日見た船の歩く海沿いの小さな町のことなんて、とっくに地面の底へ追いやっている。
東京の端々が、地面から湧き出る思考の泡粒で揺れたあの日から、もう一年以上が過ぎ去ったというのに、膨れ上がった都会の街は、やはり全てを地面の奥底へ追いやろうとして、何も出来ない諦めをカバンに詰めたまま、当たり前の風にマンション郡とお喋りを続けている。
それらの全てを私が
私が
操ることが出来れば
石塀に挟まる小さな生存のかけらも、生産されない夜に電話口へ逃げ込むことも、かすかな記憶を頼りに涙を刻むことも、全てを強要され真っ直ぐ続くコンクリートの道なりも、思考の泡粒の中にしまい込んで、何も生み出さない夜に変えてやるのに。磨り減っていくだけの、池袋も新宿も渋谷もあの街もあの都市も、皆平気な顔をして何故、許せてしまうのだろう。
とっぷり暮れた東京の街並みには、足並みをそろえたように、二つ結びの女子共が行進を続けている。コンビニの煌々とした灯りだけでお腹が満ちてゆき、詰まらない逃亡を図り、静かに確実に、地面を揺らしていく。
もうちょっと頑張れよ、とか しょうがねえ応援してやる、とか どれもこれも励みになります、がんばるぞー。