知らない
砂の上に書いたように、ことばが氾濫している。それはトーキョーの、悪だくみのひとつ。二十六歳は、もう大人ですか、まだ子供ですか、を自問自答する善悪のかたまりが、タクシーに拾い上げられて、タワーに上る夜。
消化されたマクドナルドを含む胃酸に、埼京線は遅れをとった。新宿はバカみたいに人を生み出して、ローリング、ローリング、アンドロール、している。
トーキョーの夜とハイボール、合わない会えない、修飾語ばかりの夜に、合わない会えない、泡ばかり吹く。拭いた私たちの抜け殻は掬い取られて、タワーに上る。
砂の上に書いたあのことば、どうなった? わたしは、知らない。手をつないだ? わたしは、知らない。あの男と寝た? わたしは、知らない。知らないことばかりで二十六歳を迎えました、冬の夜です。それはもう大人ですか、子供ですか、こども、ですか。
自問自答を繰り返すトーキョーの街並みを、刈り取られてしまった空を、見上げても、空がない。トーキョーにない空を、探し続けているトーキョーの真下。
もうちょっと頑張れよ、とか しょうがねえ応援してやる、とか どれもこれも励みになります、がんばるぞー。