水平線

小さな体でテキーラを叫んでいたあの頃は夢だったのかと問われる。ニューエイジを気取ってトーキョーを闊歩していたあの頃は夢だったのかと問われる。

父も母も友人も忘れてビールを吐くまで飲んでいたら、歯が全部抜け落ちた。歯医者ではもう手の施しようがないらしい。食事をしなくてよくなるから、それならそれで、よっぽど楽だなあ。奢られるままにテキーラやカクテルを飲んでいたら乳房も溶けて跡形もなくなった。空いていたはずの穴も塞がった。これでセックスをしなくて済むからよっぽど楽だなあ。

枯れた人がいるなら、お前は夢なのかと問われる。おまえはどこで足掻きたいのかと問われる。

死にたいから生きていると言うと、散々嫌な顔をしてから、生きてください。とお決まりのセリフを吐かれる。のには、もううんざりだ。

目の前にあるのはすべて夢です。母のいびき、父の笑い声、食卓の手料理、老いて寝てばかりの犬、海をはらむ風、わたしの穏やかな気持ち。それはすべて夢です。起きたらすべて終わりです。

父と母に看取られるために、わたしはビールを吐くまで飲み続け、テキーラをあおり、トーキョーで腐って「この子はとっても優しい子でした」と笑顔で埋葬してもらえれば、それだけでいい。

もうちょっと頑張れよ、とか しょうがねえ応援してやる、とか どれもこれも励みになります、がんばるぞー。