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愛かもしれない

私の視線は、電信柱の線と一緒。あれに乗るとどこかへ行ける。赤と白と黄色と青色。いつかの夕闇に呑まれた街と、海岸線の枯れた花束たちと、知らない顔の沢山の兄妹のいる場所へ。声が聞こえてお囃子に乗っていた。僧侶が一人と、いつかの貴婦人。のぼりを背負ったカブが金魚の渦へ消えていく。

あれが愛だと誰かが言うので、あれは映画だと私は言う。赤いシートに沈んだ大きな尻は、沢山の子供を産むために道具屋で買ったのだ。つまらない物語はしかし、赤と白と黄色と青色。銀幕のスターの顔に、漢数字でふられるナンバー。探してはヘイ、と呼びかけて、犬を買う自動販売機。

風鈴が鳴るからきっと、あれは夏だと兄妹たち。海岸線に落ちたぐええと涙する鳥の死骸に、僧侶が乳を揉む。十七歳では世界なんて変えられないしJRは変わらないリズムで地下へと進む。子供のための乳白色はまだここにない。

宿った心に海が沈んで、そうして笑う。ヘイ、という相槌に、ヘイと返せば、ふざけるなよとハンマーで殴られる世界。飛び交う精子に見つからない卵子。そういう世界。送電線に流れる沢山の平行軸。私が笑うのはあなたの前だけよと差し出す手のひらに、写るのは新幹線の尖った悲しみ。ああ愛かい、いいえ愛じゃないよ、でも愛だよ、それも愛かもしれないな。

#詩

もうちょっと頑張れよ、とか しょうがねえ応援してやる、とか どれもこれも励みになります、がんばるぞー。