隙間の街
東京の隙間に出来たあの街には
JRと地下鉄がヘドロを撒き散らし走っていて
海底に沈んでいつも息が出来ない
何故かばばあとじじいだけが気持ちよくのさばっている
不思議だねと君に話しかけてみるが
街の中心にできた 酒と血の塊が落ちている三角形の公園で
なんのためらいもなく顔の無い子どもを食べている 君は
会話なんか無い私の体の一部が
押しなべて並ぶ女子共と会話を試みようとしているが
ヘドロ香る隙間の街でそんなことしたって
千鳥格子が足並みを揃えるだけだ
気付けばばばあとじじいが至る所で子どもを作り
どれも一様に顔が無く
それでも量産されていき
本当に自分には顔があるのか
と友人が投身自殺を図った
手を引いて逃げるべきだ
さらってでも逃げるべきだ
ばばあとじじいの子どもを腹いっぱいに食べるくせに
体中胃液の匂いをさせているガリガリの君を背負ってでも
私は逃げるべきだ
木造一軒家の籠城に逃げ込むと
きらきら光る粒子の中で
知らない真っ白な布団がしたり顔で待っていた
風呂に君を放り込んでいくら体を洗っても
胃液と それから知らない精子のにおいが
いつまで経っても落ちやしない
これは果たして絶望なのか
ギターでさえ弦を震わせることができないのか
気付けば見知らぬ肌の君が
バスタオルでぐるぐる巻きにされて
冷蔵庫とにらめっこしていた
美味しいものが沢山詰まった 夢のような箱に吸い取られ
吐き出され もみくちゃにされ そうして君はできたのだ
海底に沈んだあの街だって
のさばるばばあもじじいも
そこから量産される顔の無い子ども達も
気付いているのだろうか
汗の張り付いた生ぬるい布団はどこだろう
誕生日にあげたキリンのカップはどこだろう
暇なときに作ったチョコケーキはどこだろう
君の吸ったタバコのシケモクは
口紅のついた残骸は
髪の毛がやたら長い君の親友は
全部全部吸い取られてしまったのか
手を離してここからいなくなった私に呼びかけ
ここからいなくなった君に呼びかけ
どこにもいない私達に 呼びかけ呼びかけ
そうして掴み上げた本当の隙間の街に
果たして何かがいるのだろうか
もうちょっと頑張れよ、とか しょうがねえ応援してやる、とか どれもこれも励みになります、がんばるぞー。