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基本、誰かがウォッカ飲んでるか散財してるか、キレ散らかしている気がする

一昨年の夏、ドストエフスキー五大長編を読み始めた。そして去年の夏、全て読破した。初読なので、考察出来るレベルで読めたとは思わない。ただただ、楽しく読んだ。でも全て読んだので、一応読破したと言ってもいいだろう。


ドストエフスキー五大長編は、罪と罰、白痴、悪霊、未成年、カラマーゾフの兄弟からなるもので、名前を聞いたことがある人も多いと思う。


新潮文庫、岩波文庫、光文社古典新訳文庫、河出文庫などから出ており、私は全て新潮文庫を選んだ。詳しい人からのおすすめと、表紙にドストエフスキーの顔があるところが何となく良いなと思った。
因みに光文社古典新訳文庫だと、付属のしおりに登場人物とその簡単な紹介が書いてあるのが有り難い。表紙のイラストも可愛いし。公式ホームページからもダウンロード可で、私はこれを印刷して使っていた。呼び名が多少違ったりすることもあるけど、全く問題なかった。
↓これ、他にも色々ある↓




読んだ順番は、罪と罰→カラマーゾフの兄弟→白痴→未成年→悪霊。結果として、私にはこの順番が一番良かったと思う。罪と罰、カラ兄は逆でもいいと思う。でもカラ兄の上巻(新潮文庫は上中下の3巻)を読み終えるのに、すごーーーーく時間が掛かったので、個人的には罪と罰から読むのがいいかなと思う。多分、一番読みやすい。主要登場人物も、他に比べたらそんなに多くないし。


罪と罰でテンションを上げ、カラ兄でドラマチックさに震え、白痴と未成年で静かな激しさを感じ、悪霊のグルーヴ感で最高潮に達するのがいいと思う。



私とドストエフスキーの出会いは、一昨年のちょうど今頃。地下室の手記/新潮文庫だった。とりあえず読んでみるかみたいな感じで読み始めたのだが、これがめちゃくちゃ面白かった。2部構成になっていて、根暗なコミュ障の男が社会の不満を零しまくる。それが結構面白く、ゲラゲラ笑いながら読んでしまった。極め付けは主人公の名前がネクラーソフ。笑えるんだけど、チクチク痛い部分もあり、五大長編もいつか読んでみたいと思った。そして買ったはいいものの、難解な上に読みにくいと聞いていてビビり、しばらく読まずにいた。
でもその半年後、色々あって嫌な気持ちになりたくなった。その時に「じゃあついでに五大長編も読んでみよう」と思い、読み始めた。


五大長編を読むにあたり、私がしたことは2つ。
1つは、先に上げた光文社古典新訳文庫のしおりを印刷すること。名前が横文字で長い上に、愛称が多いので覚えられない。これには大いに助けられた。


もう1つが、当時の大体のレートを調べておくこと。これは、他の小説を読む時にも大いに役立つ。今回の場合は、読んでいた当時のレートは1ルーブル1〜2円くらいだったので、3000ルーブルの大金とか言われても、6000円じゃんとなってしまい、いまいち大金感が出ない。当時のルーブルのレートは、約1000円くらい。だから、3000ルーブルは300万くらい(当時の大学教授の年俸がそれくらいだった)。より「3000ルーブルは大金だぜ!」感が出るし、それを2晩で使い切ってしまう登場人物のトンデモ感も出る。

時代背景等も調べておくと、より楽しめたんだろうけど、それは2周目以降の楽しみにとっておいた。決して面倒くさかった訳ではない。




各々の感想を書くと、とんでもなく長くなってしまうので、読了ツイとすごく簡単な感想だけ載せておく。


罪と罰

愛とは、人としての尊厳とは何か、ということを問われている気がした。そして同時に、私のそういうものをボコボコにされた気がした。良い意味で。


カラマーゾフの兄弟

これは、あまりにもドラマチック過ぎる。そしてスメルジャコフがひたすらムカつく。でも、彼にもたった一つの素晴らしい思い出と、愛があれば…もしかして、とも思った。彼について、とても乱暴に言うとすれば、めちゃくちゃ崇拝している推しと解釈違いを起こして自暴自棄になった、みたいな感じなのだろうか


白痴

恋愛要素が他より多い。そう言った意味では、他より楽しめると思う。ただ、人によってはムイシュキンにちょっとイラッとしてしまうかも知れない…でも、私はラストシーンがすごく好き。美しさと残酷さの共存。



未成年

主人公の手記形式、若干サスペンス調。自分が信じる理想とは何か、それが崩れた時に救ってくれるのは何かが問われる。多分この本は、下巻の3分の2からが本番。そこからがすごく面白い。同じ名前の人が2人出てくる。


悪霊

正に狂瀾怒濤。クズたちのグルーヴ感がすごい。私は今までに、こんなにグルーヴ感の強い小説を読んだことがない。クズしか出てこないし救われないけど、とても面白い。キリーロフが推せる。




まだ1周しかしていないので、偉そうなことは言えないのは分かっているし、これはどの本でも言えることだけど、気の向くままに、好きな時に読むのがいい。どれだけ時間が掛かってもいい。私もそうだったし、そうすると読まなければならぬ!という気持ちじゃなくなるので、何となくハードルが下がる。
そして最後のページを読み終わり、本を閉じた時、これを読み切ったという自信になるし、読み終えた後の達成感は何物にも代え難い。

私は、五大長編を読破することが出来て良かったと思う。もちろん難解だったし、読み終わる頃にやっと名前を覚えるくらいだったけど、とても面白かった。基本、誰かがウォッカ飲んでるか散財してるか、キレ散らかしてる気がするけど。


仕事に家事に育児に追われる私でも読めた。だから、本当に誰でも読めると思う。当時のレートしか頭に入ってなくても、めちゃくちゃ楽しめたので。
ちょっと興味があるなと思ったら、是非手に取って欲しい。五大長編が書店の本棚で、あなたに読まれる日を待っている。

最後に、私が最近読んだドストエフスキー作品を紹介する。初っ端から、誰かがキレ散らかしている。そして、そのキレ散らかしているテンションのまま進む。読者は置いてけぼり。でも、やっぱりゲラゲラ笑えるのでおすすめ。

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