〈POP/ROCKお茶の間ヴューイング〉ベン・ハーパー (Ben Harper)プレヴュー【2020.2 144】
■この記事は…
2020年2月20日発刊のintoxicate 144〈お茶の間ヴューイング〉に掲載された、ベン・ハーパー (Ben Harper)のプレビューです。
intoxicate 144
※【来日公演中止のお知らせ】
下記にてご紹介しております、ベン・ハーパー・アンド・イノセント・クリミナルズの来日公演は、誌面発刊後に主催者判断により開催中止となっております。詳しくは主催者HPをご確認くださいませ。
イノセント・クリミナルズのオリジナルメンバーと14 年振りとなる待望の単独ツアー
text:桑原シロー
ベン・ハーパーってやっぱりやる男だ。昨年リリースされたメイヴィス・ステイプルズの最新作『We Get By』。ウィルコのジェフ・トウィーディやシー&ヒムのM. ワードが制作したアルバムも良かったけれど、ベンがプロデュースのみならず全曲の作詞・作曲まで手がけた本作は、御大の豊かな人生経験や魂に刻まれた叡智などを歌に色濃く滲ませることに成功、彼女のここ数作のなかでももっとも胸に響く作品となっていた。やっぱりわかってる男だ。チャーリー・マッセルホワイトとの共同名義となる2018年作『No Mercy In This Land』もまたそうだったけれど、レジェンドたちが放つ言葉に真摯に耳を傾け、自分がいったい何をやらねばいけないのかを明確にしていく。このひたむきさが感じられないと、もはやベン・ハーパーの音楽ではない、とすら言ってしまいたくなるのだが、この姿勢こそが数々のルーツ音楽に刻まれているさまざまな思想や感情を掴み取る強い握力を彼に与えてきたのは確かだろう。
そんな謙虚でまっすぐな姿は音盤のみならず生のライヴ・ステージにおいても一貫しているという事実はみんなよく知っていることで、古い音楽に横たわる歴史を手繰り寄せるようにして紡がれる演奏は奥行きのあるサウンドスケープを描き出し、どこまでもイマジネイティヴでシネマティックだったりする。ただ、あらゆるものを引っ張り出してしまうせいか、ときにレゲエの神様と呼ばれるあの人や伝説のブルーズマンの顔がダブって見えたりしてハッとさせられることもしばしば。ベンの音楽の周波数があっちの世界にいるレジェンドたちと共振し、彼らのソウルまで呼び寄せてしまっているせいだと思うが、そんな不思議な力がどれだけ磨かれているのかをこの目で確認しにいくのも個人的な楽しみのひとつでもある。
そんなベン・ハーパーならではのユニークなライヴ体験がふたたび味わえる機会がもうじき到来する。ジ・イノセント・クリミナルズを率いての4 年ぶり(単独ツアーは14 年ぶり)の来日公演が3 月に行われるのだ。バンド・メンバーは、パーカッションのレオン・モブリー、ベースのフアン・ネルソン、ドラムのオリヴァー・チャールズと、いずれも重量級のサウンドを繰り出す面々。彼らの紡ぐ野太くて懐の深いリズムが、ベンの横顔にどんな表情を与え、彼の音風景にどう色付けしていくのか。そこもさることながら、ベンの歌心がどれほどの豊かな味わいを増しているのか、また現時点でルーツ音楽探索作業がどこまで踏み込めているのか、なども確認せねばならないし、いろいろと考えてしまってじっとしていられなくなっている。
『Call It What It Is』〈CD&LP〉
Ben Harper & The Innocent Criminals
[Stax/Concord/Hostess HSU-100662(CD)HSUJ10066(LP)]〈高音質〉
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