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第76回:思い出し笑い「白酒×兼好 毒を盛って毒を制す!?」(&ツルコ)


第76回:白酒×兼好 毒を盛って毒を制す!?

*intoxicate vol.132(2018年2月発行)掲載

この3月で残念ながら終了してしまったNHKの『超入門!落語THE MOVIE』。噺家が語る落語の世界を映像化した画期的な番組で、落語に出てくる登場人物は俳優が演じ、セリフは噺家の喋りを当てるリップシンク(口パク)なんですが、この「観る落語」、素晴らしかったですよね。柳亭市馬、柳家喬太郎、古今亭菊之丞、春風亭一之輔など実力派の噺家を起用し、古典落語をこの番組のためにコンパクトにまとめ、それぞれの落語に合わせたセットで、役者たちのまるで自分でしゃべっているかのようなセリフの当てぶりがとにかくお見事! 本編に入る前のマクラの部分を案内人として濵田岳が担当してるのもよかったし。時間的には短いものの、1編つくるための労力がさぞさぞ大変だったことと想像されます。落語って、噺家の一人語りを聴いているお客がそのシーンや人物を思い浮かべて楽しむものですので想像力が必要とされますが、特に古典落語の世界だと知らないことは想像することが難しかったりしますよね。番組で視覚化されたことは、落語の世界を想像するための助けになって、他の噺を聴いた時にも思い描きやすくなるだろうと思います。初期の頃に観た、ハライチの澤部が、人間になっちゃう犬を演じた《元犬》が印象に残ってるんですけど、その後、《元犬》を聴くと、澤部の顔が浮かんでしまうのって、いいのか悪いのか…。でもこの番組、ぜひまた再開してほしいです。


 その『落語THE MOVIE』では《化け物使い》や《替わり目》などを演じた桃月庵白酒、《親子酒》や《崇徳院》などを演じた三遊亭兼好のお2人、昨年12月にCDを同時発売したのですが、3月に発売記念落語会「白酒×兼好 毒を盛って毒を制す!? 其の二!」が行われました。昨年3月にも同趣旨の二人会をしており、チケット即完だったそうですが、今年も同様だったため、追加公演として昼の部を開催し、こちらも盛況! 平日の昼でも人を呼べるって、さすが人気のお2人。兼好最新CDには、昨年の「白酒×兼好 毒を盛って毒を制す!?」での一席で、籠池夫妻のマクラからの《厩火事》が収録されてます。もう1席は、本人主催で長く続けている独演会〈人形町噺問屋〉での《へっつい幽霊》。どちらも声色の違いで登場人物がくっきりと気持ちよく聴けます。白酒CDのほうは、長めのマクラも楽しめる《浮世床》と、吉原に居続けしている若旦那を連れ戻しにいった田舎者の飯炊き・清蔵が圧巻で爆笑の《木乃伊取り》。二人会で感じたのですが、この2人のカップリング、いいですよね。これから毎年、同時発売と発売記念二人会を続けていくの、どうでしょ? いっそ、白酒×兼好の会をCDにして、オープニングのお2人の“ 毒毒トーク”も収録していただく、と。


 考えてみると、白酒CDはワザオギレーベルから2005年にリリースされたものがお初で、喜助改め白酒となった真打昇進の時でしたが、二つ目でCDが出るというのは画期的なことでしたし、兼好も真打前の好二郎の時にDVDに収録されたり、真打になって2年目に初CDが出たりと、お2人とも若手のうちから作品を残していて、今回のコロムビアからのリリースも、白酒が4作目、兼好が6作目となりますから、30代、40代、そしてこれから50代、60代と、歳を重ねていきながら、その時々の作品も残っていくことになるのっていいですね。


 そしておめでたいことに、ちょうどこの二人会の頃に、昨年芸歴25周年を迎えた白酒の、平成29年度芸術選奨・大衆芸能部門での文部科学大臣新人賞受賞が発表されました! 昨年の『桃月庵白酒25周年記念作品集白酒四半世紀-the 25th-』CDリリースや、各地で行われた記念落語会などが評価されての受賞だそうです。入船亭扇遊も文部科学大臣賞を受賞されましたので、落語協会からお2人の受賞、おめでとうございます!


CD 『 桃月庵白酒落語集「浮世床」「木乃伊取り」』
[ コロムビア COCJ-40207]

CD   『三遊亭兼好落語集 噺し問屋「厩火事」「へっつい幽霊」』
[ コロムビア COCJ-40208]

思い出し笑いライン


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