CINEMA(Blu-ray/DVD/O.S.T)新作レビュー【2020.2 144】
2020年2月20日発刊のintoxicate 144、お茶の間レビュー掲載のCINEMA(Blu-ray/DVD/O.S.T)の新作7本をご紹介!
intoxicate 144
①【O.S.T.】
映画『ジョジョ・ラビット』オリジナル・サウンドトラック
v.a.
[ ユニバーサルミュージック UWCD-1073]
タイカ・ワイティティ監督が第二次世界大戦中のドイツを舞台に、少年ジョジョの成長を、戦争への辛口のユーモアと生きる喜びを交えて描き、第44回トロント国際映画祭で最高賞の観客賞を受賞した『ジョジョ・ラビット』のサウンドトラック。なんといっても印象的なのは映画の冒頭で流れるビートルズの《抱きしめたい》のドイツ語バージョン! 他にもデヴィッド・ボウイやトム・ウェイツなど、ワイティティ監督が選曲をするこだわりぬかれたトラックリストは、ギャップを感じさせるのに、不思議と映像とぴったり。マイケル・ジアッキーノ作曲のテーマ曲も素晴らしく美しい。 (上村友美絵)
②【Blu-ray & DVD】
旅のおわり世界のはじまり
監督・脚本:黒澤清
音楽:林祐介
出演:前田敦子/染谷将太/柄本時生
[ キングレコード KIBF-1694(DVD)KIXF-661(BD)]
「私、結構運がないんですよねぇ」序盤の葉子は、そうやってあらゆることから逃げて生きてきた女性のようにみえる。いつの日か舞台で歌うことを夢見て、ウズベキスタンで体を張って旅レポートをこなす日々。しかし、何一つ思い通りにはいかない異国での仕事を通して不安に襲われる。周りを頼ることができない葉子だが、実はプロフのおばちゃんも、バスの青年も、警察官も、みな優しく接してくれていた…。この旅が終わる頃、彼女はどう変わるのか?自分が望むものを見つけられるのか?そんなじれったくも愛おしい彼女を演じるのは前田敦子さん。前田さんが青い空を背景に歌い上げる《愛の讃歌》に注目! (佐古麻美)
③【BOOK】
菊地成孔の映画関税撤廃
菊地成孔/著
blueprint
ISBN:9784909852069
『欧米休憩タイム』に続く菊地成孔の映画批評書第3弾。「リアルサウンド映画部」「CINRA.NET」の連載記事、映画宣伝用コメント、パンフレットへの寄稿、対談等を纏めたものに書下ろしでチェット・ベイカー論を収録。“誰にでも読み易い事を、自主的に心がけた著者最初の本”とのことだが、その成果はひとまず置くとしても、例えばM C Uといった近年の映画時評などで著者の文章の面白さを堪能できるという点では菊地成孔入門には最適の一冊かもしれない。「数少ない親友だった」故人に捧げられた“まえがき”前の冒頭と、ある大批評家のエピソードとともに締める“あとがき”が印象的。(高野直人)
④【Blu-ray & DVD】
さらば愛しきアウトロー
監督・脚本:デヴィッド・ロウリー
原作:デイヴィッド・グラン 『THE OLD MAN &THE GUN』
音楽:ダニエル・ハート 出演:ロバート・レッドフォード/ケイシー・アフレック
[バップ VPBU-14888(DVD)VPXU-71777(BD)]
ロバート・レッドフォードの引退映画。監督デヴィッド・ロウリーは傑作『ピートと秘密の子供』で脇役ながらすでに絶品のレッドフォードを見せていたので内容は保証されたもの。レッドフォードが演じるのは、16回の脱獄と銀行強盗を繰り返し誰一人傷つけなかった実在の人物フォレスト・タッカー。ケイシー・アフレック、トム・ウェイツ、ダニー・グロヴァーら顔を見ているだけで幸せな脇役は勿論、主人公の恋人役シシー・スペイセクがキャリア最高の素晴らしさ!彼ら彼女らの魅力を引き立たせて、涙は無縁と飄々とスクリーンから去っていくレッドフォードの粋!見事! (高野直人)
⑤【Blu-ray & DVD】
ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド
監督:クエンティン・タランティーノ
出演:レオナルド・ディカプリオ/ブラッド・ピット
[ソニー・ピクチャーズエンタテインメント
BRBO-81579([BD+DVD]<通常版>)]
「シャロン・テート事件」を題材にしたタランティーノ最新作。本作の素晴らしさは、ラスト13分がなかったとしても十分傑作足り得ていることにある。69年のロサンゼルスを舞台に、落ちぶれた映画俳優と彼のスタントマン、そして幸福に生きるシャロン・テートの数日を映画は追う。当時をそのまま切り取ったかのようなゆったりとした時間感覚は、事件前夜のディカプリオのナレーションで活きてくる。これはハリウッドとそこに生きた人々のある種の“青春映画”である。もう二度と戻ってこないあの時間/空間。ローリング・ストーンズがこれほど感動的に鳴り響く映画もまたとないはずだ。( 高野直人)
⑥【DVD】
救いの接吻
監督・脚本:フィリップ・ガレル
音楽:バルネ・ウィラン
出演:ブリジット・シィ/フィリップ・ガレル/ルイ・ガレル
[ シネマクガフィン KKDS-896(DVD)]
監督フィリップ・ガレルとしては『ギターはもう聞こえない』の前作にあたる89年作が初ソフト化。自身がモデルの役なのにその役に抜擢されなかったことで監督である夫を責める女優の妻。この妻役を当時のガレルのパートナーのブリジッド・ジィ、監督をガレル自身が演じており、更には監督の父役と息子役を実際のガレルの父(モーリス)と息子(ルイ)が演じるという極私的メタ映画。愛とは何か? などという“重い”会話劇が中心だが、その答えを求める映画ではなく、愛とは何か? などと考え求めてしまう人間の映画である。ガレルの手際は相変わらず軽やかで鮮やかだ。 (高野直人)
Doctor Sleep©2019 Warner Bros.
Entertainment Inc. Allrights reserved.
⑦【Blu-ray & DVD】
ドクター・スリープ
脚本・監督・編集:マイク・フラナガン
原作:スティーブン・キング
音楽:ザ・ニュートン・ブラザーズ
出演:ユアン・マクレガー/レベッカ・ファーガソン
[ワーナー・ブラザース・ホームエンターテイメント1000758957
([2Blu-ray Disc+DVD]<初回仕様版>)]
スティーヴン・キング原作、スタンリー・キューブリック監督の名作『シャイニング』のまさかの続編。前作の予習をしてから本作を見なければと思うものの、予習もままならず見るタイミングを逸している向きも多いと聞く。勿論予習は大事だが、本作は前作を知らずに見たとしても十分楽しめる作品になっている。キングが映画『シャイニング』否定派であるのは有名な話だが、本作はそのキングも絶賛!かつキューブリック好きも満足できるはず。今回は“ホラー”というよりケレン味溢れる“活劇”です! それも、ノリがちょっと『ジョジョ』っぽい! 悪の首領レベッカ・ファーガソンが跪きたくなるくらい最高!!(高野直人)
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CINEMA(Blu-ray/DVD/O.S.T)新作レビュー【2020.4 145】
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