【京都国際舞台芸術祭】関西即興音楽の系譜と現在を体感できるプログラム(text:井口啓子)
現在、京都市内各地の会場で開催中の『KYOTO EXPERIMENT 京都国際舞台芸術祭 2021 SPRING』を、誌面より先にいち早くご紹介します。テキストはライターの井口啓子さん。
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〈山本精一ディレクション・音楽プログラム シアター版〉
〈音、京都、おっとっと、せいこうと〉
関西即興音楽の系譜と現在を体感できるプログラム
(text:井口啓子)
即興音楽について語るとき、避けては通れないのが、関西で1996年から2007年まで開催されていた即興音楽の祭典〈F.B.I.(フェスティバル・ビヨンド・イノセンス)〉だ。〈即興とはジャンルでは無く一つの演奏形態〉という主催者の内橋和久の言葉のまま、ジャズ、ロック、エレクトロニカなど、ジャンルを越境した音楽家たちが一堂に会し、各々の個性を発揮しながら繰り広げたセッションの数々は、破壊的でありながら不思議な魅力にあふれ、オオルタイチ、おしりペンペンズ、neco眠るといったゼロ年代以降のミュージシャンに多大な影響を与え、HOPKENや旧グッゲンハイム邸など、現在の関西カルチャーの拠点となる〈場〉にも、確かに繋がっている。
そんな関西即興音楽の系譜と現在を体感できるプログラムが〈KYOTO EXPERIMENT 京都国際舞台芸術祭 2021 SPRING〉で上演される。〈山本精一ディレクション・音楽プログラム シアター版〉は、BOREDOMS、羅針盤、ROVOなどのユニットやソロ・ワークで知られる山本精一と、大友良英、bikke、doravideo、楯川陽二郎、吉田省念、砂十島NANI、大野雅彦など、F.B.I.の常連に地元京都の若手が加わった巨大セッション企画。山本は昨年の緊急事態宣言時には自身の運営するライヴハウス〈難波ベアーズ〉で無配信・無観客ライヴを決行。そのチケットをドネーション販売するというジョン・ケージも驚愕のパフォーマンス!?を行なった鬼才だけに、今回も未知の音楽体験ができることは間違いない。
〈音、京都、おっとっと、せいこうと〉は、稲田誠、森本アリといったF.B.I.育ちの即興音楽や知的障害者からなる音楽プロジェクト〈音遊びの会〉と日本のヒップホップの開拓者・いとうせいこうによる音と言葉のセッション。太鼓にギター、管楽器、瓶笛など、思い思いの楽器を手に繰り広げられる、既存の音楽フォーマットを逸脱したアナーキーな音遊びにいとうのラップがどんな化学反応を巻き起こすか。想像しただけでワクワクが止まらない。
即興音楽の醍醐味は、結果として生まれた音楽ではなく、演奏のプロセスにあるという。世代や趣味嗜好や障害の有無や楽器の上手い下手を超えて、他者のあるがままを受け入れ、互いに変化してゆく。即興音楽の柔軟さやコミュニケーションの在り方は、ミュージシャンだけでなく観客の既成概念をぶち壊すもので、それは未来の見えない今の時代にこそ必要なもの、という気もする。
どちらもルールは2-3時間という演奏時間のみ。何が起こるかわからない音の海にダイヴして、オンラインでは味わえない時間と思考の流れを体感したい。
LIVE INFORMATION
KYOTO EXPERIMENT 京都国際舞台芸術祭 2021 SPRING
2021年2月6日(土)~ 3月28日(日)
https://kyoto-ex.jp/
※こちらの記事はintoxicate 150 (2/20発刊号)にも掲載されます。発刊のお知らせはTwitter、Facebookにて!
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