第41回:思い出し笑い「笑いを必要としているところに、進んで届けたい」(&ツルコ)
第41回:笑いを必要としているところに、進んで届けたい
*intoxicate vol.95(2011年12月発行)掲載
落語情報誌「東京かわら版」の最新号(12月号)表紙はサンタのコスプレをした立川談春で、昨年12月号の桃月庵白酒サンタを思い出し、えーもう1年経ったのね、としみじみ思ったことでした。2011年も残すところあとひと月ほど。
今年は春に大震災が起こったことで、当たり前のように思っていた平穏が一瞬にして覆されてしまうという現実を経験し、日本にとって忘れられない年になってしまいました。落語界でも、すぐに復興支援寄席を行うなど被災地支援を行ってきましたが、古今亭駿菊がNPO「今そこに落語と笑いを配達する演芸団」(今そこ演芸団)を立ち上げ、その活動も始まっています。笑いを必要としているところに、求められるのを待つのではなく自分たちから進んで届けたいという思いをもった落語家や色物芸人たちが、この11月から東北各地での落語会を行っています。彼らの笑いが被災地のみなさまの気持ちをあたたかくしてくれますように。
今年は、春風亭昇太率いる創作話芸アソシエーションSWAが年内をもって活動を休止するというニュースもありました。結成当時、新作落語の実力派が集結したことも魅力でしたが、三本線のジャージのような着物に背番号をいれたものを揃いであつらえたりとビジュアル面でも画期的な集団でした。活動を開始してから、もう8年も経つんですね。同志でありながらライバルでもあり、遊び心がありながら、志高く新作落語を追求してきた個性的な4人は、21世紀に入って起こった落語の盛り上がりを牽引してきた大きな力でした。ファイナルツアーと称して、最後の落語会を行っているSWAですが、会に行けない人にもちゃんとお楽しみを用意してくれています。『SWAのCD2011 –楽語・すばる寄席のシャッフル-』は、昇太、柳家喬太郎、三遊亭白鳥、林家彦いち各メンバーのネタを別の演者が口演するという企画で今年7月に行われた落語会を収録。活動休止はさびしいですが、いつかまた復活SWAがないとも限りませんので、あの揃いの着物、どうか残しておいてくださいね!
SWAメンバーの喬太郎をたっぷり楽しめるDVD2作もリリースされます。こちらは、本人プロデュースによる「柳家喬太郎寄席根多独演会」の高座から、古典落語2席、新作落語1席の各3席ずつ収録されています。落語って、CDですと噺に集中して、情景を思い浮かべるようにして聴きますし、映像では仕草や表情も見ることができて、どちらもいいのですが、喬太郎の場合、やはりその様々に変わる表情、オリジナルな仕草など、見てこそ楽しめるところもありますので、DVDはうれしいですよね。「綿医者」のマクラなんて、映像じゃなければどういう姿なのか想像もできないかも。まだ喬太郎落語に触れたことのない人も、ぜひこれではまってください! タワーレコードの恒例落語キャンペーンで、喬太郎のミニ落語会ご招待の抽選もありますから、運がよければライヴで聴くことができるかも、ですね。
11月の終わりに届いた立川談志の訃報。病気の公表はしていましたし、体調が思わしくないということも伝わっていましたので、古今亭志ん朝のときのように予期せぬことではなかったとはいえ、ついにそのときがきてしまったという悲しさでした。
真打昇進制度をめぐって師匠・柳家小さんと袂を分かち落語協会を飛び出して立川流を創設した談志ですが、この9月に、落語協会の新会長・柳家小三治が来年の新真打昇進について、これまでのような順送りの昇進ではなく実力での昇進にするという決断をし発表したのを聞いて、なにかを思ったりしたでしょうか。
訃報のニュース報道では、取材を受けた弟子の立川談笑が、集まった弟子たちに談志が言った最後の言葉は放送禁止用語だったのでここでは言えない、と話してましたが、さすが家元、最後まで!