映画『マリウポリの20日間』
仕事をほっぽり出して『マリウポリの20日間』を観てきました。取材したのはAP通信のジャーナリスト。外国記者が次々と退避する中、20日間マリウポリに滞在して記録をしたものです。
この映画は本年度のアカデミー賞の長編ドキュメンタリー部門賞を受賞し、監督が「この賞と引き換えに、ロシアがウクライナを攻撃せず、私たちの都市を占領することもなくせればいい」と演説をしたことも知られています。
断片的には見たことがある映像もそれなりにありましたが、通しで見たのは初めてでした。初日から3日目くらいで犠牲者が急増していき、建物もどんどん壊されていきます。子供が負傷したり亡くなるシーンはやはり直視ができませんし、親が遺体に取りすがる姿は涙なしには見られません。集団埋葬のシーンや、地下室の遺体安置のシーンは現実離れした感覚を覚えました。(それと映像を見ていて、人間1人を運ぶのに(それが遺体であっても)必ず2、3人の人間がついているという当たり前の事実に気づきました。)
マリウポリは戦闘が激しかった都市ですが、記者は病院周辺をはじめ、市民の側に密着して取材しており、地上での戦闘シーンはあまり出てきません。犠牲になっているのがごく普通の市民で、彼らを攻撃する理由はどこにもないことがはっきり分かる構成になっています。
そもそも初期はミサイル攻撃と空爆が主で、地上攻撃はその後ですので、ロシア兵が殆ど画面に出てこないのですね。敵が見えないほどの大きな暴力であることが、敢えて姿を出していないゆえに鮮明に打ち出されているとも言えます。
2022年の『マリウポリ 7日間の記録』はまだ見ていないですが、Amazon Primeでレンタルできるようですので、少し気持ちが落ち着いたらこちらも観るつもりです。