採用を進化させることで事業の拡大に貢献する
タレントアクイジションを世の中に普及させる一環として、さまざまなタレントアクイジションマネージャー(以下、TAマネージャー)を紹介していく連載企画の第3弾。
今回インタビューしたのは、SMB(中堅・小規模企業)、グローバル、エンタープライズ領域のRA(リクルーティングアドバイザー)、 両面コンサルタント、さらに新卒、アルバイト・パート領域の営業に至るまで、多岐にわたる採用支援の経験を持つ村上 幸弘さん。どのようなキャリアを築き、今何を大切にして採用支援に取り組んでいるのか。そして、タレントアクイジションマネージャーとして今後目指していきたい世界とは何なのか、詳しく伺いました。
「人」と「経営」をつなげられる仕事を目指し、リクルートへ転職
──新卒では、 商社系投資会社に入社。投資先の選定や、自社が合弁で立ち上げたバイオベンチャーに出向した際には、営業や営業企画に携わってこられましたが、資本構成の変化から事業環境が変化し、入社3年目には退職を決意。その後リクルート(当時リクルートエイブリック)に転職されますが、リクルートを選んだのはどういう理由からですか?
「人」と「経営」をつなげられる仕事をしたいと思ったのが、リクルートを選んだ理由です。前職で出向していたバイオベンチャーの経営が行き詰まった理由は、人材の差。マネジメント層の経営手腕が足りていないように感じました。当時、同じ商材を持つライバル企業は売上をどんどん伸ばしており、「人によって、経営はこれほどに変わるのか」という現実をまざまざと突きつけられたのが、私にとっての大きな学びとなりました。転職を機にリクルートに入り、人の採用を通じて、企業の経営をサポートしていきたいと考えるようになったのです。
HRのプロ人材として活動する原点になった大手クライアントでの大型採用プロジェクト
──2005年にリクルートへ入社され、SMB(Small and Medium Business/中堅・小規模企業)やグローバル、大手企業などを経験されてきました。その過程において、どのような案件に携わってきたのでしょうか?
採用から事業に影響を及ぼす醍醐味を味わえたのは、リクルートへ入社して2年目ぐらいに、医療系リサーチを専門とする外資企業を担当した案件になります。元々は100名程の会社だったのが、関わる数年のうちに250名の規模になり、そのうち半分程度の社員を私の紹介を通じてご入社頂きました。
当時は、頂いた求人要件に基づき人材を紹介するのみならず、どんな事業をこれからするのか?それはどんな人・組織なのかから紐解き、紹介を行えていました。リサーチ事業から派生させたコンサルティング部門の立ち上げから関わったり、ソリューション提案のベースをつくるプロダクト開発の職種を新規で採用したり。人事部だけでなく、事業サイドのキーパーソンにも多数会わせていただき、「これからどうビジネスを作っていくのか」「どんな計画を立てて、進めていくのか」といった話をじっくりヒアリングし、それらを基に、求人要件から私が作成しました。
こうして事業・組織にフィットした人材を採用していくことで、既存ビジネスも大きく拡大していきました。クライアントに深く入り込んでいけば、仕事の一部分だけではなく、クライアントの事業に対しても大きなインパクトを与えられる。そんな体験ができたことで、経営(事業)に影響を与えられる採用の可能性を感じることができました。
もう1つは、ナショナルクライアントなどの大手企業を担当していた頃の案件です。これは、今HRのプロ人材としてプロジェクトに向き合う際に意識していることの原点ともいうべき仕事です。
クライアントは大手メーカー。大先輩から引き継ぎ、私が転職エージェント営業担当として、求人メディアの営業担当とも連携して取り組むことになったプロジェクト。当時は求人メディアと合わせて、年間5億円以上を受注していました。求人も、当時どこにも募集されていなかったレアな職種だったこともあり、前例のないことにチャレンジしなければならず、しかもクライアントの担当者も厳しい方で、要求されることも難易度の高いものばかりでした。
たとえば、年に何十回と採用説明会やセミナーを行っていて、それを運営するだけでも手一杯だったのですが、こちらが提案する際には必ず付加価値の高さや新規性を求められ、それが実現できていないと、突き返されてしまいます。
毎回、あの手この手でアイデアを出し続けました。成果を出せなかった施策も含め、相当数の打ち手を講じたと思います。でも、それを続けてきたことで効果のある施策だけが残り、「こうやればいいんだ」という成功事例も次第に見えてきました。最後の方には、「お前らがやってうまくいかなかったらしょうがない」と言ってもらえるほどの関係性を構築することができました。その経験があるおかげで、今はどんな課題に直面しても、柔軟に対応できる強さを持てるようになったと思います。
3年間で採用人数を2倍にする目標をわずか1年で達成
──InterRaceでは、どういった役割を担い、どういう案件に携わっているのですか?
現在は、人材斡旋事業も担いながら、RPOとしてプロジェクトマネジメントを担うディレクターとしても複数、案件を手がけています。
たとえば、あるIT企業からは事業成長に伴い、3年間で一気に採用数を2倍超の70名規模にするための体制づくりについて相談を受けました。私が行ったのは、今何ができていて、どこを変えていかなければならないのかという採用活動診断と、あるべき採用体制を提示して、採用組織体制をデザインすることでした。もちろん、目標の採用人数を達成しなければならないため、社内に深く入り込んで、伴走しながら、細かく採用業務の改善を行っていきました。その結果、1年間で100名弱を採用でき、3か年計画を大きく前倒し。まさに採用から事業成長に繋がる仕事をご支援することができました。
その他には、医療系ベンチャーでのマネジメント職の採用プロジェクトを担当し、ダイレクトリクルーティングを軸としたサービスをお客様専用に構築し、提供しました。このように事業規模やジャンルに関わらず、多岐にわたる企業の採用支援を行っています。
関わる人たちが主体的に取り組めるように知恵を絞る
──TAマネージャーならびにRPOディレクターとして大切にしていることや強みは、どんなところでしょうか?
大切にしていることは、採用業務が複雑化・多様化している中でも、企業の人事採用担当者が主体的に取り組めるように、行う順番や方法などを創意工夫することです。プロジェクトはクライアントだけでなく、他のHRのプロ人材とも連携するため、その人たちにとってもスキルアップになるように、それぞれのベストな状態をつくる事は難しくても、ベターな状態はできるように常に考えています。
採用業務は、従来のやり方が比較的「正解」とされがちです。なぜなら、やり方を変えることによって、パフォーマンスが落ちたり、現場スタッフの業務が煩雑になり、工数に大きく影響するからです。しかし、最近は人材の採用難易度が高くなり、採用業務に求められる知識・技術レベルが上がってきているため、やり方を変えざるをえない差し迫った状況にきていると感じます。
人事採用担当者などは日常業務で手一杯なところがあるので、そんな状況でもプロジェクト(組織)が進化していけるように、どこから変えていくとよいかを整理した上で、 誰にどのような声をかけるのか。プロジェクトの一歩目となるスタートについては、特に気を配るようにしています。
自身の強みは、幅広い採用領域を経験してきたところなので、いろんなニーズに対応できます。SMB、大手企業、グローバル領域の人材紹介営業(RA)、さらにはCA。そしてInterRaceにジョインする前は、アルバイト・パート、新卒領域などにも関わり、マルチな採用支援を行うことが可能です。今こうしてプロ人材として活動できているのは、これらの経験の蓄積があるからです。だからこそ、うまく活かして、クライアントの個別の課題にも柔軟に対応していきたいと考えています。
企業に寄り添い、道なき道をつくっていく醍醐味がある
──プロ人材として活躍するようになって、リクルート時代と比べて、自分の中での変化はありましたか。
リクルートの頃は、営業や事業開発、営業企画などのさまざまな組織での業務を経験する機会をもらい、その中で常に新たなチャレンジを行ってきました。しかし、振り返れば、大きな方向性が定まっている中でやっていたように思います。それに対して、今は、クライアントの採用課題に応じて、制約なく新たな取り組みにチャレンジできる環境です。企業とともに、道なき道をつくっている手応えがあり、リクルートの頃とは大きく異なります。
今の転職エージェントはオペレーション化しつつある一方、私たちのように企業に寄り添って、採用を進化(変化)させていくことで、クライアントの事業拡大に貢献することができます。これは転職エージェントではできないことだと思います。
採用は変えられる────このことを多くの人に気づいてほしい
──この先、タレントアクイジションマネージャーとして、どのような世界を目指していきたいですか?
従来の採用のやり方を変えていくことは大変だし、難しいこと。この考え方が先行しすぎて、消極的なスタンスになっている経営者や採用現場の人たちが、まだまだ多いと思います。
「採用は、変えられる」ということに、いかに気づいてもらえるか。そのためには、事例や実績がもっと必要です。タレントアクイジションマネージャーとは、「採用のあり方から事業を変えていける人」のこと。少しでも多くの実績をつくり、「こういうやり方をすれば変わるんだ(進化できるんだ)」と、前向きに捉えられる人たちを、InterRaceを通じて増やしていきたいと、今は強く思っています。
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