ハイスペックエンジニア採用を成功させるポイントとは(後編・IT/スタートアップ編)
絶対数が少なく、採用難易度が極めて高いハイスペックエンジニア。しかし、自社の経営計画の目標を達成するためには、是が非でも採用しなければなりません。また企業によっては、事業が立ち行かなくなる可能性もあります。
前編では、メーカー系のハイスペックエンジニアとの向き合い方や、採用効
果を上げるための情報提供や面接での対応方法などについて、伺いました。
今回は、IT企業やスタートアップ企業でのハイスペックエンジニアの採用について、山本皇貴さんと、木津和弘祐さんに伺います。
メーカー系も、IT系もモノづくりのエンジニアであり、聞くべきポイントは変わらない
──前編では、おもにメーカー系のハイスペックエンジニアのお話でしたが、IT系のハイスペックエンジニアについては、どのように捉えていますか。
山本 IT系もモノづくりのエンジニアとして、押さえるべきポイントは同じです。有形・無形関わらず、エンジニアの皆さんは、同じようにこだわりを持っているので、それをヒアリングして、見出していくことが大切だと思います。
昔、あるコンサルティングファームでインフラエンジニアを募集した時も、インフラエンジニアは普段何を考えていて、何にジレンマを感じているのかをつかんだ時に、採用が決まり始めました。
木津和 どういうポイントだったんですか。
山本 一般的には、他のエンジニアが要件定義を行って、アプリケーションの構成などが決まってから、インフラの要件が決まります。後工程においては、テストを行って導入となれば、先にインフラを構築しなければならないため、 お客様とアプリエンジニアのわがままと無茶を聞くだけで、常に受け身で、自分たちからは発言できないというのが、インフラエンジニアの悩みでした。
木津和 それは辛いですね。
山本 こうした状況を伺った上で、この企業のインフラエンジニアの立ち位置を聞くと、堅牢なインフラがあるので、アプリなども成り立っている。そんな環境だから、最初から他のエンジニアとは対等に議論ができるとのことでした。
例えば、インフラエンジニア側から「○○○○な最新テクノロジーがあるから、△△△△の構成でやれば、■■■■■■なアプリができるのでは」という提案をしているという話を聞いて、 そのエピソードを求人票で伝えると、いろんな人から応募がくるようになりました。
従来のインフラエンジニアの悩みなど、ある程度の相場観は必要になりますが、現場のエンジニアが何に醍醐味(充実感)を感じているのか、その話を聞くことができれば、他社と差別化できる求人票に仕上げられると思います。
木津和 私も似た経験があります。某情報系サービス企業でハイスペックエンジニアが足りないから、RPOとして入ってほしいという依頼を受けて、その企業のエンジニアの状況をヒアリングしたんです。すると、中途社員として入社したエンジニアのほとんどがいわゆる冠系の企業出身で、彼らはみんな入社してすぐに辞めていました。その理由が、「仕事の進め方」だったんです。
山本 想定していたやり方と違ったわけですね。
木津和 そうです。前職では「バグなんてありえない」「バグを1つでも起こしてはいかん」という仕事の進め方をやってきた人たちで、この企業では、それとは正反対のワークスタイルで、とにかくスピードを求められました。「バグが出たら後で直して、とにかく進めながら修正していこう」という仕事の進め方で、そのやり方についていけなくなり、ほとんどが3カ月で辞めていました。
能力が足りなかったわけではなく、やり方が合わなかったんです。この働き方のミスマッチを解消できると、一挙に入社者も増え、定着率も高まりました。
大手のメーカー企業と比較すると、IT企業は、業界としてまだ歴史が浅いので、企業側も求職者側も、どこに違いがあるのかが分かっておらず、それで入社後にミスマッチが起こっていたんだと思います。
CEOとCTOが互いに歩み寄り、お互いの調整点を探っていくこと
──スタートアップ企業でのハイスペックエンジニアはどうですか。
山本 いろいろ課題はありますが、一番問題なのは、CEOとCTOとの関係性が良好でない場合です。例えば、SaaS系の企業で、CEOがビジネスを拡大していくために「エンジニアが大事だ、数が必要だ」と言って、積極的にエンジニアを採用しようとハッパをかけますが、一方でCTOが「どういうモノをつくりたいと思っているのか」をCEOが理解していないと、採用がうまくいかないことが散見されます。
メーカー系のエンジニア採用でお話しましたが、「エンジニアはどういうことをやりたいと思っているのか」「大事にしているこだわりは何なのか」を、ビジネスサイドの経営陣もしっかりとくみ取ることが大事だと思いますね。
木津和 そうしないと、スタートアップ企業の場合、エンジニアが足りないことでメーカー以上に経営に与える影響が大きいですからね。
山本 そうなんです。反対にCTOも、CEOが考えている事業計画や資金(調達)計画について理解を深められるかどうかがポイントになってきます。「ここまでやらなければいけない」というCEOの想いをまずは受け止める。そして、お互い歩み寄って、お互いの調整点を探っていくべきだと、いろいろなスタートアップ企業を見ていて思いますね。
人事部自らが経営や現場に働きかけて、巻き込んでいくこと
──組織としてのまとまりがなく、ハイスペックエンジニアの採用も硬直状態にあるなかでは、今後人事部はどういう行動をとるべきなのでしょうか。
山本 まずは、行動を起こす前に、人事部として「自分たちがやらなければ、変わらない」と腹をくくることでしょうね。特に経営層や現場との関係がギクシャクしている状態であれば抵抗があるかもしれません。しかし、これをやらなければ、会社自体の存続にも関わることなので、経営陣と現場そして人事部の三者が膝を突き合わせて、話し合う場を持つことです。
その際、自社としての現状を理解してもらう必要があるので、外部の知見を借りながら、自社のポジショニングや競合状況、他社事例などをもとに説明し、人事部が「できること」と、「できないこと」(現場に協力してもらいたい)を伝えて、巻き込んでいくことが重要になってきます。
木津和 「自分たちが変えるんだ」という強い意志が持てるかどうかですね。
「達意の文章」と「応援してくれる仲間」をつくること
──次にエージェントを巻き込んでいくには、どうすればいいでしょうか。
山本 言い出せばキリがありませんが、押さえてもらいたいことは2つです。1つは、誰が読んでも解釈がズレない、ちゃんとした求人票を書いて、展開することです。総合型や特化型など、取引するエージェントは、各々で求人票を作成するので、そのベースとなるものを、時間をかけてつくることです。
エンジニアの場合は、美文を書く必要はありません。意味のしっかりと伝わる「達意の文章」を心がけること。形容詞を使わずに、具体的な数字やエピソードで示すことが大切です。
もちろん、この前提には、プロジェクトの重要性を認識した上で、その背景となる内容を反映することも必要です。さらには、採用率が高まるように選考のリードタイムを見直したり、待遇を整えたりすることも当然行います。
もう1つは、応援してくれる同士(仲間)をつくることです。「この会社が好きだ」「応援したい」。そう思ってくれるエージェントを1社でも、2社でも増やしていくことです。
木津和 同感です。また、特化型エージェントなどでは、ハイスペックエンジニアの採用に強いエージェントなどもあるじゃないですか、そこは、どう見ていますか。
山本 どちらかといえば、会社というよりも人(担当者)でしょうね。誰と組むかが大事だと思います。ファンづくりは、その会社と取引している感覚ではなく、個人をどう巻き込んでいくかだと思います。そのためには、前編でお伝えした、「プロジェクトの重要性」や、「エンジニアのこだわり」などを認識した上で、自社のエピソードを拾い上げて、自社の魅力を求人票に落とし込んでいくことです。
木津和 そうですよね。エージェントの担当者は企業から提出される求人票を見て、自社の特長や強みが分かっているかどうかを、品定めしているところがあります。そこでアピールできれば、ファンになってもらえる可能性は非常に高いですよね。
山本 そのためにも、まずは外部のリクルーターを使って、採用市場の相場観を理解するというのは、おすすめの方法だと思います。
まとめ
今回は、IT企業やスタートアップ企業でのハイスペックエンジニア採用を成功させるための数々のポイントをお二人にお聞きしました。今回出てきたのは次の5つです。
企業の事業計画をけん引していくハイスペックエンジニアを採用する際には、経営陣や現場、エージェントを巻き込んでいくこと、採用の相場感をFactで押さえることが必要不可欠です。
理想的な組織体制やエージェントの関係づくり含め、お困り事があればお気軽にご相談いただければと思います。
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