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アルファーかベーターか、それともどっちも? 〜『読みの整理学』〜【11月読書本チャレンジ18】

今日は『読みの整理学』を取り上げます。

『読みの整理学』

外山滋比古氏といえば、大ベストセラーの『思考の整理学』が有名ですね。他にも本がたくさん出ているので日本語の本を書く人、かと思いきや、そもそもは英文学者でいらっしゃるのでした。

日本語に関する思索、思考の方法、など英文学を飛び出したところで有名になられた感じです。私が読んだものはエッセイ風のものが多く、「世の中これではイカン!」という風の語り調で、なんとなく気骨の人というイメージがあります。本書でもわかりやすい文章がもてはやされている傾向に対して、

かまないのは楽だと言ってはいられない。ものを食べるには咀嚼のよろこびがなくてはいけない。歯ごたえのないようなものでは、食べた気がしないだろう。

わかりやすさの信仰

と、分かりやすいものばかり読んでいると難しいものが読めなくなる傾向がある、と述べている。活字離れに結びついているのでは、ともある。

亡くなられたのが2020年。もうすでにメールやSNSが世の中の標準になってきていた時代とは思うのだけど、YouTubeやましてやショート動画のTiktokが隆盛で文字さえあまり現れないものに対しては、どのように感じられていたのだろうか。

話が逸れましたが、本書の内容に戻りましょう。

本を読むことを考えると、既に分かっている内容を読む場合と、知らないことを読む場合があると言えます。

この既知を読むのをアルファー読みと命名したい。そして、もうひとつの道を読むのをベーター読みと呼ぶことにする。

アルファー読み・ベーター読み

アルファー読みはことばを覚え始めた最初から使うものですが、ベーター読みは抽象的な概念を始めとして学校で習う教科書の内容などが含まれます。でも未知を読むベーター読みは、それなりに面倒なのですね。だから、

社会へ出て、強制から外れると、たちまちアルファー読みへ退行して、ふたたびベーター読みを試みることなく一生を終わるのが珍しくない。

二つのことば

となります。ベーター読みの最たるものは、「門前の小僧習わぬ経を読む」になるでしょう。本書でもベーター読みの王道は「読書百遍意自ずから通ず」とあります。特に古典など。でもベーター読みのコツをつかむために古典の百篇読みがもっともよいとしながらも、著者は「当世風ではない」ところが泣き所、と嘆いています。

子どものときに物語を読むこと、創作の世界から抽象的なおかつ未知のことを学ぶベーター読み、それこそ幼児期の言語能力には必要なことであり、それがないと学校に入っても学力は付かず、大きな影響を子どもの人生に与えることになる、ともあります。この点は『プルーストとイカ』のウルフ博士の読字に関する理論と繋がるところがありますね。お話の読み聞かせから本を読めるようになり、その後の人生まで左右するかもしれない、というところです。

本を読むことがいかに大切か、今一度振り返ることができます。そして音読や江戸時代には寺子屋でよく行われていたという素読についても、その効能について考えるきっかけになりました。

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