くどうようこ@本好きの日英同時通訳者

現役の同時通訳者で大の本好き。 現在は京都芸術大学大学院通信課程で文芸専攻クリティカルライティングゼミに在籍中。 通訳や英語のこと、読んだ本のレビューなどもろもろ紹介しています。 瞬読2級トレーナー!📕

くどうようこ@本好きの日英同時通訳者

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やはり最後はこの本で! 〜『読書について』〜【11月読書本チャレンジ20】

今月の締めに持ってきたのは、ショーペンハウアー先生の『読書について』です。 最初からこの本をラストに持ってくる、と決めていました。だってほんの薄い本で、しかも訳者による解説もそこそこの長さがあるというのに、中身は「う〜む……」と考えこむようなことばたくさん書いてあるのです。尊敬の念を込めて「ショーペンハウアー先生」と私はお呼びしております。 内容はもう、今月紹介した読書本の中でも数々の引用があるほど、有名な部分がたくさんあります。私の読んだ光文社古典新訳文庫版では、 自

    • 読みたいと思う本がこんなにあるってステキ 〜『千年の読書:人生を変える本との出会い』〜【11月読書本チャレンジ19】

      今日は本棚から積読のままで気になっていた本を取り上げます。『千年の読書:人生を変える本との出会い』です。書店員による読書エッセイ、となっています。 著者はTSUTAYAで書店員をしている三砂慶明氏です。中にはいろいろなトピック別に著者が読んできた本、そしてそこから考えたこと、思ったことなどが展開していきます。 私が特に面白いと思ったのは、第4章「お金」から見た世界、というところの「利子」に関する話です。 ええ〜、そうなの? 全然知らんかった!! というか経済学は学んだ

      • アルファーかベーターか、それともどっちも? 〜『読みの整理学』〜【11月読書本チャレンジ18】

        今日は『読みの整理学』を取り上げます。 外山滋比古氏といえば、大ベストセラーの『思考の整理学』が有名ですね。他にも本がたくさん出ているので日本語の本を書く人、かと思いきや、そもそもは英文学者でいらっしゃるのでした。 日本語に関する思索、思考の方法、など英文学を飛び出したところで有名になられた感じです。私が読んだものはエッセイ風のものが多く、「世の中これではイカン!」という風の語り調で、なんとなく気骨の人というイメージがあります。本書でもわかりやすい文章がもてはやされている

        • 思ったより優しい本だった〜『正しい本の読み方』〜【11月読書本チャレンジ17】

          今日取り上げるのは、橋爪大三郎氏の『正しい本の読み方』です。この本を知ったのは今月7日目のチャレンジで紹介した『人生を変える読書』に載っていたからでした。 『積読こそが完全な読書術である』から「読書本沼」に本格的にはまった風のある私は、『人生を変える読書』であった「本のネットワーク」という話にとても興味を持ったからです。世にある本は何かそれ以前に出た本を何かしら下敷きにしているものであり、お互いにネットワークを築いている。そのネットワークの結節点にあたるのが古典だ、というこ

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        • 11月読書本チャレンジ
          20本
        • 10月英語本チャレンジ
          20本
        • 9月実用書チャレンジ
          21本
        • 英語のあれこれ
          19本
        • 2024夏休み新書チャレンジ
          23本

        記事

          旅に出たら地図を読むのと同じ、よね?〜『10分で名著』〜【11月読書本チャレンジ16】

          今日のこの本は「名著読まなきゃ熱」で買ったのにそれを積読していた、という本です。『10分で名著』、いかにも名著が読みやすくなりそうなタイトルです。 さて、「名著=古典」は精読すべし、とは昨日取り上げた加藤周一『読書術』にも書いてあったことです。しかもそんな古典を読むのはある意味機が熟してから、つまり他の現代作品をあれこれ読んでから、自分で「読むべし」と思ったときに読めばよい、というような話でした。 でもそんな古典は往々にして難解なもの。 「よかった! 読めないのは私のせ

          旅に出たら地図を読むのと同じ、よね?〜『10分で名著』〜【11月読書本チャレンジ16】

          60年前の読書術がいまなお色あせない驚き〜『読書術』〜【11月読書本チャレンジ15】

          今日の本は、加藤周一『読書術』です。以前紹介した『積読こそ完全な読書術である』の本で存在を知りました。 最初に光文社から出版されたのが1962年、その後岩波書店同時代ライブラリー版として出たのが1993年、この版を底本として作られた岩波現代文庫版が私が今手元にあるものです。現在2024年、最初の出版から数えてもう60年を超えているのに、読んでいて古さをあまり感じません。それどころかうなづける点も多いぐらいです。 今、私は通信制の大学院生なのですが、そこで参考資料として入手

          60年前の読書術がいまなお色あせない驚き〜『読書術』〜【11月読書本チャレンジ15】

          解像度の高いレンズに磨き上げる 〜『名著の予知能力』〜【11月読書本チャレンジ14】

          昨日に引き続き、同じ「100分de名著」のディレクター・秋満吉彦氏の本を取り上げます。 昨日紹介した『「名著」の読み方』からちょうど1年ほど経って出版されているようだったので、書店で見かけたときは「あ〜、同じような内容を新書に焼き直したのかな?」と思ったんですね。といっても、また名著が紹介されているなら読みたいな、と思って、しばらく積読だった本です。 ところが内容はかなり違う!? いや、タイトル違うんだから違ってて当たり前なんですけどね。 「100分de名著」の番組を作

          解像度の高いレンズに磨き上げる 〜『名著の予知能力』〜【11月読書本チャレンジ14】

          「名著」を読むこととは? 〜『「名著」の読み方』〜【11月読書本チャレンジ13】

          NHKの「100分de名著」という番組、ご存じでしょうか? 25分の番組4回で一冊の「名著」について取り上げる番組です。伊集院光と安部みちこアナウンサーが毎回ゲストに指南役を迎えて名著をひも解いていきます。 私もこの番組好きなんですよ、と言いつつも、毎回見ているか、というと実はそうでもない。ここに名著の近寄りがたさと言いましょうか、そんな敬遠したくなる気持ちも含まれているように思います。今日はその「100分de名著」のプロデューサー、秋満吉彦氏の『「名著」の読み方』を取り上

          「名著」を読むこととは? 〜『「名著」の読み方』〜【11月読書本チャレンジ13】

          本との出会いはひとそれぞれ 〜『姜尚中の青春読書ノート』〜【11月読書本チャレンジ12】

          今日は今までとはかなり趣を変えて、『姜尚中の青春読書ノート』を取り上げます。本棚でしばらく眠っていた本です。 なぜこの本を買ったのか、というと、姜尚中さんご本人にお会いしたことがあるからです。もう数年前の話になりますが、熊本大学での講演を通訳する機会がありました。 それまで「何か政治的な発言をされる文化人」ぐらいの印象しかなく、名前を存じ上げているぐらいだったのですが、実際にお会いしてみるとなんとも気さくな方で通訳との事前打ち合わせにも快く応じてくださいました。そのときの

          本との出会いはひとそれぞれ 〜『姜尚中の青春読書ノート』〜【11月読書本チャレンジ12】

          批評の神様のおっしゃることには 〜『読書について』〜【11月読書本チャレンジ11】

          今日は小林秀雄『読書について』を取り上げます。 といっても相手は「批評の神様」、日本の文芸批評というジャンルを開拓した人物として知られている方です。 私の中で「小林秀雄」といえば、サマセット・モームとかバートランド・ラッセルと一緒にひとくくりになっています。高校生のときの現代文と英文読解で、「こいつら、やべえ!」と思った人物、ということです。モームやラッセルについては単に私の英語力が不足していたせいでしょうけど、小林秀雄については日本語ですからね。文章が難解であるという印象

          批評の神様のおっしゃることには 〜『読書について』〜【11月読書本チャレンジ11】

          知的好奇心のアンテナを張ろう! 〜『現代人のための読書入門』〜【11月読書本チャレンジ10】

          今日は昨日と同じ書評家・印南敦史氏の『現代人のための読書入門』を取り上げます。先月、2024年10月に出たばかりの本ですね。 『読んでも読んでも忘れてしまう人のための読書術』では、「読めない」「分からない」「忘れる」という視点で書かれていましたが、今回は「いかに読むか」に焦点が置かれています。 一方、本書『読書入門』では読書に関わる多くの本からの圧倒的な引用と合わせて、「どう読むか」という主題について多角的に検討されています。 たとえば、子どもの頃はあれこれと好奇心を持

          知的好奇心のアンテナを張ろう! 〜『現代人のための読書入門』〜【11月読書本チャレンジ10】

          忘れたっていいじゃないの? 〜『読んでも読んでも忘れてしまう人のための読書術』〜【11月読書本チャレンジ9】

          さあ、読書本チャレンジも今日で9日目。 今日は『読んでも読んでも忘れてしまう人のための読書術』を取り上げます。これも今まで「積読」だった本です。 ここまでの読書本は比較的「ガッツリ」系でした。肉食系というか「読め~! 読まないと死んでしまうぞ~!」と言いたいような。いえ、もちろん強要するようなことはありません。あくまで「読むといいよ」というスタンスではありましたが。 それに対してこの本は作家・書評家という肩書きを持ち、今もたくさんの本を読み書評をする方が書いた本でありなが

          忘れたっていいじゃないの? 〜『読んでも読んでも忘れてしまう人のための読書術』〜【11月読書本チャレンジ9】

          読まない方がよいことも、ある? 〜『読んでいない本について堂々と語る方法』〜【11月読書本チャレンジ8】

          今日取り上げるのは、『積読はこそが完全な読書術である』でも大きく取り上げられていたバイヤールの『読んでいない本について堂々と語る方法』です。昨日の『人生を変える読書』でも出ていましたよ。 こんなに(?)読書界では有名な本のようなのに、私は最近まで知りませんでした。いやはや、この本面白すぎる!  そもそも「本を読んだ」とははたしていかなる状態なのか、そしてそれに対して「読んでいない」とはどうなのか? そんなこと今まで考えたこと、ありました? なんとなく、「読んだといえば、全

          読まない方がよいことも、ある? 〜『読んでいない本について堂々と語る方法』〜【11月読書本チャレンジ8】

          人生を変える? 人生が変わる? 〜『人生を変える読書』〜【11月読書本チャレンジ7】

          今日は、『人生を変える読書』をとりあげます。 私がこの本見つけたのは帯にある「出口治明推薦!」の文字のおかげでした。よくよく読んでみると、著者の堀内勉氏は『読書大全』を書かれた人でした。実はこちらの本、書店で見かけて興味は持っていました。でも「世界のビジネスリーダーが読んでいる」と表紙にあるものだから、ついつい「わたし、ビジネスリーダーをちゃうしぃ〜?」とあまのじゃく精神を妙に発揮して買わなかった本でした。 大変申し訳ございませんでしたっ! 『読書大全』も読ませていただき

          人生を変える? 人生が変わる? 〜『人生を変える読書』〜【11月読書本チャレンジ7】

          未読の選書リストは極めて有用〜『時間をかけて考える 養老先生の読書論』〜【11月読書本チャレンジ6】

          本日取り上げるのは、読書の方法論というよりは書評を集めた本です。著者は養老孟司氏。『バカの壁』シリーズその他たくさんの著書を出していらっしゃる方です。 私も自分ではジャンル構わず読む方だ、と思っていたのですが、養老先生に比べれば微々たるもの。この中で読んだことのある本はほとんどありません。ひとつにはドキュメント性の高い本をあえてピックアップしてあるということも関係するのでしょうけど、やはりサイエンス関連に何かを深く突っ込んだ本は科学者でも研究者でもない者にとっては、そもそも

          未読の選書リストは極めて有用〜『時間をかけて考える 養老先生の読書論』〜【11月読書本チャレンジ6】

          本を読むのは知識を得るためだけではない〜『脳を創る読書』〜【11月読書本チャレンジ5】

          今日取り上げるのは言語脳科学を専門としている酒井邦嘉氏の『脳を創る読書』です。 この酒井氏の本は私もいくつか読んでいて、脳科学や英語の学習の話の本でした。本書でもチョムスキーの生成文法理論や、脳の基本的なクセや反応などにもかなり時間をかけて説明されています。文字を読む、という行為がどのように脳内で処理されるか、という点については、また引用してしまいますが、ウルフ博士の『プルーストとイカ』にもある通りです。脳のどの部位がどう働いて処理されるという点については、後続の『デジタル

          本を読むのは知識を得るためだけではない〜『脳を創る読書』〜【11月読書本チャレンジ5】