日本語から正しい英語を探す手だて〜『英語教師が知っておきたい日本語のしくみ』〜【10月英語本チャレンジ19】
今日取り上げるのは、日本語教師が解説する日本語のしくみです。といっても日本語と英語を比べているので、英語学習者にも利点があります。
どうしても日本語の枠組みから出ていない人に英語ではこうなる、ということを説明するのにとても適した内容です。和英辞典では同じようなことを試みている訳ですが、こうしてみると私たちはネイティブとして日本語を使っているが故に日本語の文法について、かなり無意識であるということが分かります。
そもそも、日本語の文法をきちんと習ったことってほぼないですよね? いまどきの中学校でなら少し国語の授業で出てくるのでしょうか。私が中学校を出たのは大昔のことですが、私立の学校だったせいか、きちんとテキスト付きで日本語の文法を少し学びました。
「こっきーくるくるくれこいっ!」
「せっしーするするすれせよっ!」
とか謎の呪文が頭の片すみに残っている程度には。
日本語の動詞にも活用形があるのですよね。上のふたつは「サ行変格動詞」と「カ行変格動詞」の活用形。他のふつうのやつは「ラ行五段活用」とか、例外のない分かりやすいヤツです。ちょうど英語でいうところの「規則動詞」「不規則動詞」みたいなもんでしょうか。comeとかseeとか簡単そうな動詞が不規則変化してくれますよね、英語の場合。日本語では主に「来る」「する」そしてその複合語、つまり「勉強する」など名詞と組み合わされた動詞の活用となります。
日本語の文法は他に助詞の使い方でしょう。私たちは本当に無意識に使っていますが、日本語もこれほど規則があったのね、と感心するほどに本書ではいろいろな文法例が取り上げられています。
といってもけっして文法の説明に終始するわけではなく、英語の初学者が日本語に引きずられやすいポイントに絞って説明してあるので、分かりやすいです。
面白かったのは、時制に関する項です。英語では過去形、現在形、現在完了形、進行形などなど色々な時制があって日本人からすれば「うへぇ!」となるのですが、日本語だって時系列で時制を並べてみれば同じように規則があるものです。時制の一致が当然の英語ネイティブから見れば、日本語では過去のことを話しているのか、現在のことを話しているのか、分からないことが多いだろう、ということもすんなり想像できます。
要は英語と日本語は「違う」ということです。日本語の言葉それぞれの守備範囲が英語とは重なっていない、もしくは重なっている部分が極めて小さい場合にズレが起こる、理解できない、となるのは単語レベルでも文法レベルでも同じことなのですね。
英語をたくさん読み聞きして、「英語のスキーマ」を手に入れたら気にせずに正しい言葉遣いができるようになるでしょう。でも最初は母国語との比較で新しい言語を理解するのは当然至極のことです。
巻末にある「英語にしにくい日本語の定型表現」が地味にお役立ちかもしれません。「お疲れ様」「よろしく」など確かに訳しにくい、というか、対照の言葉がないものもありますし、「しかたがない」「もったいない」「面倒くさい」などもあげられています。あなたならこの日本語、どうしますか? 日本語の定型は英語の定型にはならないことが分かる、と思います。
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