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「シャトレーゼ」のケーキが京都のカフェのメニューに!

「シャトレーゼ」のケーキが京都嵐山のカフェで出されていたことがわかりました。
シャトレーゼは、説明するまでもないですが、洋菓子、和菓子、ケーキ、パン、アイスクリームなどの菓子を比較的低価格で提供するチェーン店です。

しかし、「京都で最も美しいカフェ」と銘打っている京都嵐山のカフェで、シャトレーゼのケーキ「かわいいくまちゃん」が飲み物とのセットで1580円で提供されていたとのこと。
シャトレーゼのこのケーキと思われます。

もちろん、「シャトレーゼのケーキ」とはこのカフェでは言っていません。
さて、これがこれは商標法上、問題でしょうか?

商標の問題はありません。
商標権侵害とは、「他人の登録商標を無断で自分の商品やサービス(役務)の付すること」だからです。

この事件では、「シャトレーゼ」という登録商標をこのカフェが自分の店のケーキに付したわけではありません。
「実はシャトレーゼのケーキを自分の店のメニューとして出した」というだけです。

もしこの店が、自店のケーキに「シャトレーゼのケーキです!」といって出したら、これは商標権侵害です。しかしこれはそういう事案ではありません。
この事件は何のお咎めもないのでしょうか?

シャトレーゼは「商品の転売禁止」を掲げています。

オークションサイト、フリマサイト、全く無関係のネットショップでシャトレーゼの菓子が販売されているからです。品質管理、賞味期限などの問題があり、シャトレーゼ側としてはコントロールできない販売を禁止したいのは当然です。

京都のカフェでシャトレーゼのケーキが提供されていることは、品質管理等の懸念があり、シャトレーゼ側としても文句を言いたいでしょうし、もしこの注意書きに同意して購入したのであれば、その同意に違反したことになります。

また、「当店の特製ケーキです」というような表示をして、シャトレーゼのケーキを提供していたのであれば、誤認惹起行為として、不正競争防止法違反になる可能性もあります。
そのほか、お客さんを騙したことになるので、刑法上の犯罪にも該当するでしょう。

しかし、「バーで市販の柿ピーやスナックが出されるのに、何が問題なの?」というSNS上の声にも頷けます。今回の事件は、
「有名な他店のケーキをカフェでメニューとして提供したこと」
つまり、同業他社が有名店のケーキを自店のケーキとして出したことで、人々の感情的な問題を引き起こしているに過ぎないといえます。

このカフェで「シャトレーゼのケーキを食べられます」と言えばよかったのかも知れませんが、それでは「転売禁止」の文言に引っ掛かるため、許諾を得る必要があったでしょう。

シャトレーゼは、「弊社のブランドを著しく傷つける」行為であるとコメントしており、ここでいうブランドはまさに「商標」です。確かにブランドイメージを傷つけるのであれば、商標法で保護されるべきです。

しかし、現在の商標法では「他社の商標を無断で商品に使用した」行為でなければ、商標権侵害とはされません。あえていえば、「登録商標のイメージを損なう」と主張することは不可能ではありません。

ブランドは商標だけではなく、そこに蓄積された信用を意味します。実際に商標を無断で使用するだけでなく、信用を損なう行為を商標法で取り締まることができるように、解釈を広げる必要性を痛感します。

参考サイト


弁理士、株式会社インターブックス顧問 奥田百子
翻訳家、執筆家、弁理士(奥田国際特許事務所)
株式会社インターブックス顧問、バベル翻訳学校講師
2005〜2007年に工業所有権審議会臨時委員(弁理士試験委員)英検1級、専門は特許翻訳。アメーバブログ「英語の極意」連載、ChatGPTやDeepLを使った英語の学習法の指導なども行っている。『はじめての特許出願ガイド』(共著、中央経済社)、『特許翻訳のテクニック』(中央経済社)等、著書多数。