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【中国語講座】なんかいや

中国語の言葉の中に時々「え~?これって中国語だとこんなふうに言うんだ~、なんかイヤ」と思うことがあります(笑)。

イヤって言っても仕方ないんですが、もうちょっと他に言い方なかったのかねって、思ってしまうんですよね~。

例えば:
 
缅甸
Miăndiàn

「ミャンマー」の国の名前なのですが、実はこれ、音訳ではないようなのですね。だってもともとこの国は「ビルマ」という名前でしたが、そのころから中国語では“缅甸”という名前でしたからね。

では一体どうしてこんな漢字が当てられているのでしょうか?実は1文字目“缅miăn”は「はるか遠い」という意味で、2文字目“甸diàn”は「郊外」のような意味なのです。つまり、“缅甸”とは「はるか遠い郊外」という意味なのです。

う~む、つまり中国から見ると、チョー遠いド田舎ってことですかね?え~?もっとどうにかならなかったのかな?と思いませんか?(ちなみに日本語でも「ビルマ」の漢字表記は「緬甸」ですから、日本語も同罪ですけどね…苦笑)

他にも:

黑管
hēiguăn

これ何のことかご存知でしょうか?楽器なんですが。

そう、クラリネットなのです!

確かにクラリネットは黒い楽器ですけど~、そんなこと言ったらオーボエだって黒いですよね?ちょっと大雑把すぎやしませんか?って思うわけであります(笑)。

クラリネットは、もう少し特徴をとらえた言い方“单簧管dānhuángguăn”という言い方もあります。“簧”というのは「舌」の意味があるそうですが、クラリネットなどで使う「リード」のことを指すようですね。クラリネットはリードを1枚だけ使って演奏しますので、“单簧管”と言うようです。これなら許せます(笑)。ちなみに、リードを2枚使うオーボエは“双簧管shuānghuángguăn”と言います。

では、これは何のことでしょうか?

假声男高音
jiăshēng nángāoyīn

最初の“假”という字は「仮の」のような意味もありますが、日常生活の中でよく使われる意味としては「偽の」「いつわりの」が多いように思います。

そうすると「いつわりの声の男性の高音」。。。なんだかね~。

これは、いわゆる「カウンターテナー」のことを指します。カウンターテナーってご存知でしょうか?ファルセット(裏声)を使って女性の声域を歌う男性の声楽家のことです。

ファルセットのことを中国語では“假声”と言います。「仮の声」「偽の声」???どっちにしてもあまりいい表現とは思えませんよね~。まぁ日本語でもファルセットは「裏声」というなんだかマイナスイメージな言い方をしますから同じようなものですが、さすがに「カウンターテナー」のことを「裏声テナー」とは言いませんしね~(笑)。

あまり音訳をせずにできるだけ意訳して外来語や海外の文化を取り入れる姿勢は、素晴らしいと思うし、たいていは感心し中国人を尊敬するのですが、時々「う~ん、それしかなかった?」と言いたくなることがあるんですよね~(笑)。まぁいいんですけどね。

通訳・翻訳家 伊藤祥雄
1968年生まれ 兵庫県出身
大阪外国語大学 外国語学部 中国語学科卒業、在学中に北京師範大学中文系留学、大阪大学大学院 文学研究科 博士前期課程修了
サイマルアカデミー中国語通訳者養成コース修了
通訳・翻訳業を行うかたわら、中国語講師、NHK国際放送局の中国語放送の番組作成、ナレーションを担当
「文法から学べる中国語」等、著書多数

2021年5月までの記事は弊社の「翻訳コラム」でお読みいただけます。