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自分起点の探究学習が、休校中の学校課題への積極的な取り組みに及ぼした効果

今、新型コロナによる一斉休校が延長され、学校からのプリントの課題も多く出されている。オンラインの教材も、今の時期は、せっかく無料で公開もされている。一方、我が家の子どもは、生活リズムが崩れ、なかなか机やPCの前に座らず、どうすれば宿題や勉強をさせられるのか・・・。こういう家庭が、日本中にたくさん溢れれているのではないだろうか。

でも、考えてみれば、当然だろう。そもそも学校は、皆が行くし、行かなくてはならないから行っていた。登校したら、先生の話を聴かなくてはならないから聞いていた。でも、今は、行かなくていいし、先生も目の前にいないのだから。

もともとこういうことで「成立」していたことなのだから、「家庭での学習」をいきなり保護者に求められても、立ち行かないのは当然である。保護者だって、慣れない在宅ワークや、自営業ならテイクアウト販売ほか生き残り策の実行で苦戦しているわけである。

そもそも、学校の勉強や課題は、子どもの興味があってやってこなかったことに真の原因があろう。とはいえ、集団教育では、なかなか叶わないので、これからも期待はできない。

自分の関心を起点とした個別の探求学習

そんな中で、私が4月から開始した自分の関心を起点とした個別の探求学習の様子を実況中継的に記事にしてきた。


この記事は、その生徒が所属する中学校の前の校長先生のFacebookのご投稿をきっかけとして、メルケル首相の演説を読む(英語を含めて)の方を書いたところ、多くの方に読まれ、また「スキ」も、私の記事としては、多く頂いた。

自分に関する課題(理科分野)とコロナ対策に関する課題(社会分野)

その中学生には、2つの課題を提示した。1つは、「自分の体のある器官の構造について調べる」こと、2つ目は、上記の記事に書いたコロナ対策をめぐる社会的な課題である。

2つの課題のうち、どちらを選ぶといえば、

「どちらも興味があるけれど、やっぱり、まずは、自分に関する方が大事かな?」

と、彼はそちらを選び、着手した。

こちらの課題の取り組みについて、私も予期しなかったインパクトが見られたので、読者の皆さんの家庭教育でもご参考になると考え、本記事で紹介したい。

本人と保護者の承諾を当然、得ており、それ以上に、本人は、この記事の文章にも、公開前の下書きに対して、いろいろと気づいたことを意見してくれた。彼も、いずれは発信者になれるように、今、「文章の書き方」の勉強もしているので、その教材にもなる。

いわば、先生の文章を生徒が添削しているというわけで、彼の意見を反映して、何箇所か加筆修正したのが本記事である。これもアウトプットやプレゼン重視の探求学習としては、いい機会になるだろう。

思わず、話が逸れたが、下記に彼が最初に選んだテーマの取り組みによる波及効果を紹介するので、ご参考になれば、幸いである。

●自分の体の器官について無料の動画で広く学ぶ

ネットで検索するとヒットしすぎて混乱する。そこで、中学生向けの学校の課題として、「とある男が授業をしてみた 中学 理科」や「家庭教師のトライ 中学理科」等の無料動画から、その器官に関するものを探しておいた。また、併せて「自分の器官への外部からの刺激」についてもテーマに入れておいたので、それについては、「すらら」というオンライン教材(休校中は無償提供)は、アニメや図が多く、丁寧に説明が進むので、音や光の性質といった物理分野のことを学んでもらった。

●保護者からのメッセージ

 課題を出して2週間ぐらい経た時に、お母さまとのやりとりの中で、家庭での勉強の様子を伺ったら、次のメッセージを頂いた。抜粋して紹介しよう。

「(前略)大賀先生とのお話の中で、■■(注:生徒の名前)は、調べ学習が楽しくなったようで、学校から休校期間にやるように出ていた理科の調べ学習を、自らどんどん進めていました。
これは、これまでの■■にはないことで、「すごいね、二年生になるとちょっと違うんじゃない?」と声をかけたら、
「大賀先生との関わりで調べるのが楽しくなった」と話していました。(後略)」

なんとも嬉しい報告ではないか!私が行ってきた探求学習は、先生や塾が用意した課題を調べたり、体験するよりも(これも体験を含めた広義のインプット)、自分が関心をもったことを「調べる」ことで、「学ぶことの楽しさ」を知ってもらうことが狙いであった。とはいえ、まさかこんなすぐに変化が見られるとは思わなかった。

ただ、ぬか喜びをしてはいけないし、何よりも本人の声を聞かないわけにはいかない。そこで、次のセッションで確認してみた。

●本人に確認してみたところ・・・

■■君に聞いたら、

「うん。そうですよ。」

と、まるで普通のことのように話す。まあ、それは当然だろう。ただ普通にやっているだけだろうから。こちらの狙いが当たったのは、こちらの喜びに過ぎない。

続いて、■■君は以下のように説明してくれた。

「あの課題をしたら、自分でもいろいろと関連の動画を観るようになったんです。そしたら調べるのが面白くなってきました。そこで、学校の課題もこの方法でやってみると楽しくて、勝手に手がどんどん動き、気がづいたら、課題がほぼ終わっていたんです。」

とのこと。なんともすごい話ではないか!

そして、オンラインをしているモニターの画面一杯に、学校からの課題の冊子に書き込んだものを見せてくれた。分野でいえば、理科や保健になるようだ。配布されたテキストの章の範囲から、自分が関心を持つテーマを選んで自分のテーマを設定し、それについて調べるものだった。

もともとは白い部分にだったところにぎっしりと書き込まれている。そこで、いつも教えている大学生がよくやるコピペ?と思って聞いてみたら、

「自分で複数のネットで調べたことを他のノートに書き写して、その後、それらを整理して、提出用の用紙に清書をしました。」

とのこと。

さすがだ! 真面目な生徒は助かる。

最後の2ページだけはまだ白紙で、ここは、自分で調べる課題を自由に設定したものを書くらしい。そこには、私が最初に提示し、彼が取り組んだ「自分の体の器官」や「外部からの刺激」について調べたことを書く予定だとのことだった。(うんうん、記念にもなるし、いいじゃないか!)

●自分起点の探究学習の効果

自分の体の器官や外部からの刺激は、2年の後半で学ぶ内容である。調べ学習の課題は、中2になったばかりだから、範囲は重複していない。学校からは出るはずもない課題に■■君が取り組むことを支援したことが、学校からの課題にも波及効果を生んだといえるだろう。

このような波及は、認知心理学では、「転移」という。取り組む姿勢それ自体が変わることで、それが他の課題にも「転移」したというわけである。

●個別の探究学習の狙い 

学びが内発的な動機に支えられるとき、いわゆる「地頭を鍛えること」が出来る。これは、単にカシコくなる、というだけではない。生きていく限り、常に不確実な状況に自分の力(人の助けを借りるという自分の力も含む)だけを頼りに世界に向き合わねばならない。

そのため、「わからないことを調べられる自分自身への自信」をつけてもらうことが、生きる力を高めることは間違いない。そして、それが高まっていくことを自分が実感出来る時、世界への向き合う姿勢も変わってくる。

最初は自分のために、そして、その次は、知ったこと、納得したこと、そして高まった実感がある力を、誰かそれを必要とする人のために活かしたい、という気持ちにもなってくることだろう。

●中学生に大学生や専門職と同じ学習スタイルが活かせるか

これまで大学生や専門職を相手に講義や研修をしてきたが、今、思えば、20年ぐらい前から、ずっと探求学習の方法で行ってきたと思える。これは中学生だって、大人と同じ様に、リスペクトをして接し、同じような方法こそ効果があると考え、今のようなスタイルで学びの支援を始めた。

いずれは中学生に特有の課題も出てくることだろうが、それはその時に、本人の意見や気持ちをしっかり聞いて、解決策を一緒に考えれば、おそらく乗り切れるだろう。

●仲間の募集中(若干名)

探求学習として、こんな感じで進めているが、今は生徒と先生が1対1の良さが活きているが、やはり同じ中学生同士で、学年は違っても、発見したことや自分なりの考えを、教え合い、疑問をぶつけ合う仲間がいた方がいい。

そこで、彼にも、そのあたりを聞いたら、すこしはいた方がいいとの考えだったので、若干名を探すことにした。


まだ若干名の余裕があるので、関心を持たれた方は、直前の記事の中にある電子メールに、お問い合わせ下さい。

なお、■■君との探求学習のその後については、引き続き、実況中継的に記事にしていく予定なので、これにご関心をお持ちの方は、フォローをされておくと、確実にお届け出来ると思います。